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 筆者は、現在THSに集中しているトヨタも、将来的には2モーター式のシリーズハイブリッドに移行する可能性が大きいと考えている。日経xTECHでもトヨタがTHS以外の方式を採用する検討を始めたことを報じている。モーターや電池が高価だった時代にはTHSは効率的なシステムだったが、時代は変わりつつあるのだ。

i-DCDの度重なるリコールも遠因?

 もっとも、i-DCDが一世代限りでその役割を終えることに筆者自身はいささかの寂しさも覚える。非常に巧妙な仕組みだと登場したときから感心していたからだ。7速DCTは切れ味のいい変速フィーリングが美点だが、一方で乾式クラッチを使っているのでクリープ走行の滑らかさはトルコン式AT(自動変速機)にはかなわない。

 しかしi-DCDでは発進をモーターが担当し、その後エンジンとクラッチをつなぐので、発進時のぎくしゃく感がない。DCTの欠点をモーターと組み合わせることでうまく補う仕組みになっているのが感心した理由だ。

 一方で、どんな走行条件のときにどの変速段を選び、どのタイミングでクラッチをつなぎ、どの程度モーターで駆動力をアシストするかなど、構成要素が多く複雑な制御が要求される仕組みだなとも感じていた。だから、i-DCDがリコールに見舞われたときにも、意外な感じはしなかった。新しいシステムで、これだけ大変な制御をするのだから、ある程度はしかたない、と不謹慎ながら思った。ただ、その回数が7回にも及んだのはさすがに予想外だったが。

 さらにいえば、ホンダが1モーター式をやめて2モーター式に一本化するのは将来の電動化戦略をにらんでのものでもある。i-MMDは駆動力のほとんどをモーターから得るという点で、PHEVやEV、FCVと共通する。だからi-MMDに使われている高出力モーターや制御の技術は将来の電動車両にも横展開できる。i-DCDは、手の届く価格の国産車(他に国産車でDCTを採用するのは先に紹介したレジェンドやNSXを除くと日産の「GT-R」のみ)では唯一DCTを採用するシステムだった。それだけにたった1世代でさよならとなってしまうのは残念だが、これも「エンジン主体のハイブリッドからモーター主体のハイブリッドへ」という時代の流れなのだろう。