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 THSも駆動用と発電用の2つのモーターを備えるが、駆動力はエンジンとモーターの駆動力を足し合わせることで得ている。このためエンジンを常に効率のいい条件で運転するという点においてはシリーズハイブリッドよりも不利だ。実際、トヨタの「カムリハイブリッド」とホンダの「アコードハイブリッド」のカタログ燃費を比べると、車両重量1600kgの上級グレード同士の比較ではカムリが28.4km/Lであるのに対してアコードは30.0km/L(どちらもJC08モード)と、設計年次が古いにもかかわらずアコードがカムリを上回る。

 ではトヨタがこれまでシリーズハイブリッドを採用しなかった理由は何か。それはシリーズハイブリッドはコストが高くつくためだ。駆動力を主にモーターから得るシリーズハイブリッドは、トヨタのようにエンジンの駆動力とモーターの駆動力を足し合わせるシステムと比べて大出力のモーターが要る。実際、カムリの駆動用モーターの出力が88kWなのに対してアコードは135kWと大きい。

 しかも大出力のモーターを駆動するには発電用のモーターも大型のものが必要だ。さらにモーターの出力が大きい分、バッテリーも大容量のものが必要で、カムリの約1kWhに対し、アコードは1.3kWhと約3割多い。トヨタはコストと性能のバランスからシリーズハイブリッドにしなかったし、ホンダも小型車に採用するのにi-MMDはコストが高すぎた。

 だから、今回ホンダが小型車にi-MMDを採用するという方針を発表したときにまず浮かんだのが「コストは大丈夫か?」という疑問だった。フィットと同じクラスには日産のノートがあり、ノートがシリーズハイブリッドであるe-POWERを採用したときにも驚かされたのだが、ノートでは売れ行きが思うように伸びていなかったEV「リーフ」用のモーターやインバータをほぼそのまま流用することで、開発コストや設備コストを抑えていたのでまだ理解できた。

 ホンダが今回i-MMDを小型車向けに採用することを決めたのもコスト削減の見通しが立ったからだ。上級車種とモーターの径は同じまま厚みを薄くするなど、同じ設備で生産できるようにしたり、磁石をより低コストな製造法に切り替えるなどの工夫により2モーター式であるにもかかわらず1モーター式のi-DCD並みのコストを実現したという。