前回の「ついにホンダも発売 各社のEVが似るワケ」に引き続き、ホンダの電動化戦略について取り上げる。前回の復習になるが、ホンダは2030年に世界販売台数に占める電動車両〔ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)〕の比率を2018年の約7%から9倍以上の3分の2に高めることを目標にしている。その内訳は、15%がEVとFCV、50%がHEVとPHEVである。つまりホンダは向こう10年間の電動車両の主流をHEVと考えているわけだ。
そのホンダが次世代のハイブリッドシステムの本命と位置付けているのが2つのモーターを使った方式である。ホンダには現在、1モーター式、2モーター式、3モーター式の3つの種類のハイブリッドシステムがあり、1モーター式の「i-DCD」を小型車、2モーター式の「i-MMD」を中型車、そして3モーター式の「SH-AWD」を最高級車の「レジェンド」と高級スポーツカーの「NSX」に搭載している。

面白いのは、小型車向けの「i-DCD」と、高級車種向けの「SH-AWD」の中身が実質的にはほとんど同じであることだ。小型車向けのi-DCDは出力22kWの比較的小型のモーターと7速DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)を組み合わせたハイブリッドシステムで、変速機の内部にモーターを組み込んでいるのが特徴だ。従来のホンダの1モーターハイブリッドシステム「IMA」は、エンジンと切り離してモーターだけで走行するモードを実現できない構造だったのに対し、i-DCDはエンジンと変速機の間のクラッチを切ることでモーター走行を実現できるようにしたのが特徴だ。
レジェンドやNSXでも、モーターを組み込んだ7速DCTを搭載しているのはi-DCDと同じだ。異なるのは、レジェンドの場合は後輪を、NSXの場合には前輪を、左右独立に駆動する2つのモーターを追加していることだ。これにより、3つのモーターで車両の前後、および左右(レジェンドなら後輪、NSXなら前輪)の駆動力配分を自在に制御できるようにしているのがSH-AWDの特徴だ。
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