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 この背景には携帯電話に関係する交通事故の件数が増加していることがある。警察庁によれば2018年中に運転中の携帯電話使用などが原因で発生した交通事故件数は2790件で、過去5年間で約1.4倍に増加しており、特にカーナビソフトの画面を注視しているときの事故が多くなっている。死亡事故の発生率は、携帯電話を使用している場合、使用していないときの約2.1倍に増加するという。

運転中の携帯電話使用などが原因で発生した交通事故件数は2790件で、過去5年間で約1.4倍に増加している(資料:警察庁)

自動運転中の「ながら運転」を認める

 同じ期間に、交通事故件数は全体で3割減少しているから、携帯電話使用中の事故が、看過できない問題として浮上したのはよく分かる。しかしもしそうだとしたら、不思議なのは同じ改正の中で携帯電話使用の禁止を緩和する条項が同時に含まれていることだ。ちょっと難しい表現になるのだが、原文の表現は以下のようになる。

 「自動運行装置を備えている自動車の運転者が当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転する場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該運転者については、第七十一条第五号の五の規定(※)は、適用しない。1. 当該自動車が整備不良車両に該当しないこと。2. 当該自動運行装置に係る使用条件を満たしていること。3. 当該運転者が、前二号のいずれかに該当しなくなった場合において、直ちに、そのことを認知するとともに、当該自動運行装置以外の当該自動車の装置を確実に操作することができる状態にあること」(※ 携帯電話等の無線通話装置を保持して使用すること及び画像表示用装置の画像を注視することの禁止)

 この内容を分かりやすい表現にすれば、自動運転システムを作動させているとき、すぐに運転を代われる態勢でいる場合に限って、スマホの画面やカーナビゲーションシステム(カーナビ)の画面を注視していてもいい、ということだ。つまり、最初に紹介した改正内容では携帯電話を手に持って見ながら運転しているときの罰則を強化していながら、こちらでは運転中に携帯電話の画面を注視することを許している。全く正反対の内容が、道路交通法の改正で同時に盛り込まれたわけだ。

 もちろん、罰則の強化は人間が運転している場合であり、ながら運転を許すのは自動運転中なのだから、双方に矛盾はない。しかし、筆者が非常に意外に感じたのは自動運転中のながら運転を許したことだ。