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 一方でメーカーにとっても、電池がユーザーのものでなければ劣化状況などのデータを集めやすくなる。このことは中古車市場でEVの価値を高めることや、電池を2次利用するときの価値を高めることにつながるだろう。例えば5年後でも電池が75%程度の性能を維持していれば、ユーザーはその5年間、劣化する25%分だけの電池代を払う、というビジネスモデルも考えられる。そうすればユーザーの負担が減り、購入しやすくなる。つまり、単なる売り切りモデルだけでなく、リースや中古車販売、電池のリユースなど様々なビジネスモデルを組み合わせて、車両価格が高いという難点を解消しようとしているのだ。

トヨタがEV販売で想定する様々なビジネスモデル。リースや電池のリユースなどを組み合わせ、電池が高いというEVの難点をユーザーに感じさせにくいビジネスモデルの確立を目指す(資料:トヨタ自動車)

 さらにトヨタは今回の発表で、超小型EVに使う電池の形状を標準化し、EVだけでなく家庭用の蓄電用電池としても使うことを想定していることを明らかにした。この超小型EVの分野では、トヨタのいう「仲間づくり」が自動車業界に限らず、住宅メーカーや太陽電池システムのメーカーなど広い範囲に拡大していく可能性がある。

 このようにトヨタは、EV用プラットフォームの企業の枠を超えた共通化や、単なる売り切りに限定されないクルマの「売り方」といった新しいビジネスモデルを導入することで、これまでEV普及のネックとなってきた価格の高さを克服しようとしている。

リチウムイオン電池の性能向上がカギ

 リチウムイオン電池のコスト低下によって、2025年にはガソリン車とEVの価格はほぼ等しくなるという予測もある。その一方で、電池容量を相当に増やしたとしてもエアコンの使用などを想定するとガソリン車と同等の航続距離を実現することは2025年の時点でも難しいだろう。また現在最短でも30分程度かかる充電時間をエンジン車の給油時間と同等の5分程度に短縮することも、技術的には可能だろうが充電ステーションの設備コストが上昇することなどから、当面普及は限定的と考えられる。つまり現在のEVが抱える問題のいくつかは、2025年時点ではまだ解決していない可能性が高い。

 一方で、EVには走りが静かでスムーズなことや、エンジンルームが小さいので車体の大きさの割に広い室内が実現できること、維持費が安いことなどのメリットもある。今回のトヨタの発表にはなかったが、各輪にモーターを搭載して真横にも動けるようにするなど、エンジン車には難しい機能もEVなら実現できる。コストを下げたり難点を解消したりするだけでなく、いかにエンジン車の発想から脱却し、EVならではの魅力を実現できるかが、EV普及のための真のカギだろう。

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