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EVを売るために打つ手

 それもそうだ。トヨタは1997年12月に初代「プリウス」を発売して以来、20年以上の歳月をかけて、ようやく2018年にHVの世界販売台数で約163万台にこぎ着けた。HVにはEVのような充電ステーションが少ない、航続距離が短いという問題がないにもかかわらずである。日本や欧州市場でトヨタの販売台数に占めるHVの比率が約4割に達している現在でさえ、米国市場ではあまり受け入れられていない。まして、HVよりも普及のハードルが高いEVの販売台数を、これから6年で100万台にするという目標に確信が持てないのも道理だろう。寺師副社長も会見の中で「もしEVがそんなに売れるなら、HVはもっと売れるはずだ」と発言している。

 かといって、トヨタが成り行きに任せ、EVを拡販するために何も手を打たないかというとそれは違う。むしろ、EVを拡販するための手を考え抜いたうえで、それでもEVの販売台数が2025年に100万台以上に達するかどうか分からない、というのが正直なところだろう。ではトヨタが「EVは売れない」というこれまでの常識を覆すをために何をしようとしているのだろうか。

 1つは仲間づくりだ。今回の発表でトヨタは新たなEV専用のプラットフォーム「e-TNGA」を発表したのだが、このプラットフォームはモジュール構造になっていて、車体はフロントモジュール、センターモジュール、リアモジュールの3つのモジュールで構成されている。これに電池モジュールとフロント、リアそれぞれのモーターを組み合わせてプラットフォームを構成する。

e-TNGAは変動部分と固定部分を組み合わせてコストを抑えつつ多彩な車種への展開を可能にする(資料:トヨタ自動車)

 それぞれのモジュールには寸法の長短や出力の大小によっていくつかのバリエーションを持たせておき、必要に応じてこれらのモジュールを組み合わせることで様々な車種を展開する構想である。車種ごとに一から開発するのに比べて効率化につながり、また多くの車種で共通部品を使うことでコストの低減が可能になる。

先行するフォルクスワーゲン

 こういうモジュール化されたプラットフォームによって車両のコスト低減を図る手法はすでにエンジン車の世界では世界の完成車メーカーが様々な形で取り入れている。その考え方をEVの世界に最初に持ち込んだのは、ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)が2016年に発表したEV専用のモジュールプラットフォーム「MEB」だ。MEBについてはこのコラムの「VW、ベンツなど欧州メーカーがEVに本気」でも紹介しているのだが、VWはMEBの発表以降、MEBを使ったモビリティーサービス用車両や、小型ハッチバック車のコンセプト車、多目的スポーツ車(SUV)のコンセプト車、小型バスのコンセプト車などを矢継ぎ早に発表している。そして商品化第1弾となる「ID.3」を2019年の秋に発売することもすでに発表済みだ。

フォルクスワーゲンが発表した同社初の量産EV「ID.3」(左)とEV専用プラットフォーム「MEB」の外観(右)。まだ正式発表前のため外観は偽装されている(写真:フォルクスワーゲン)

 MEBはフラットな床下に電池を敷き詰めて配置するほか、2輪駆動車では後輪を駆動するモーターを搭載し、4輪駆動車ではこれに前輪駆動用モーターを追加する。エンジン車に比べると床下に電池を搭載するぶん、床面は高くなるが、エンジンルームの寸法を縮小できるので、同じ全長ならエンジン車よりも広い室内を確保できるのが特長だ。これまでのEVはエンジン車のプラットフォームを基本に、床下に電池を敷き詰めたりしてEVを仕立てる場合が多かったが、MEBはEV専用のプラットフォームとすることで、EVならではのメリットを最大限に引き出そうとしている点が新しい。