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 トヨタ自動車の現在の中国におけるシェアは5%程度なので、2025年に700万台のNEVの販売が義務付けられれば、トヨタは約35万台のNEVを販売しなければならない。35万台のEVであっても、先程と同様の計算をすれば、必要になるリチウムイオン電池の量は17.5GWhと膨大であることに変わりはない。中国でこれだけのEVを売らなければならないことがはっきりし、しかもそれだけの電池を供給できる電池メーカーとして中国勢が台頭してきたのがここ数年の変化だ。この変化が今回の電動車両の販売目標を5年前倒しした背景の1つだろう。

欧州でもEVが必須に

 加えて、欧州では車両のCO2排出量規制の強化が決まり、2030年までに企業平均の車両1台当たりのCO2排出量を約60g/kmまで下げなければならなくなった。これは2021年に95g/kmまで減らすという現在の規制に対して4割近く減らさなければならないことを意味する。60g/kmというのがどれだけ厳しい値か。トヨタで最もCO2排出量が少ない車種の1つであるプリウスでさえ、CO2の排出量は75g/km(2輪駆動仕様)である。つまり欧州の2030年CO2排出量規制は、すべての車種をプリウス並みの燃費にしても達成できない厳しい水準だということになる。

 トヨタは2018年時点ですでに平均燃費が101.2g/kmと、欧州で自動車を販売するメーカーの中で最も低い“優等生”である。そのトヨタをもってしても、2030年規制の達成は容易ではない。今後約10年の間に徐々に規制値に近づけていくことを考えれば、2025年までにまず約2割、2025年から2030年にかけてさらに約2割平均CO2排出量を減らしていくことが必要だ。このためには現状のエンジン車やHVだけでは達成が難しく、EVの導入が必須とみられる。

 このほか、米国ではカリフォルニア州を中心とする8州でZEV(Zero Emission Vehicle、EVなど排ガスを出さない車両を指す)規制の強化が進むこと、国内でも燃費規制が強化されることなどを考慮し、筆者が大ざっぱに見積もった結果では、2025年までに世界で実施される環境規制を達成するにはトヨタ1社でおよそ80万台程度のEVの販売が必要になる。トヨタは今回の会見の中で、2025年に販売する電動車550万台のうち、環境規制の達成に必要な台数は100万台よりも少ないと回答していたが、その背景にはこういう計算がある。

 このように、今回の電動車両の販売目標の前倒しには、世界で強化される環境規制の水準がはっきりしたことや、達成にはEVの販売を増やすことが必要だと明らかになったこと、しかもそれに必要な電池の調達にもめどが立ってきたこと――などの背景があることが分かる。しかしそれはあくまでも社会的な背景であり、社会的な背景でユーザーがEVを購入してくれるわけではない。今回の発表でもトヨタは、EVの販売比率を決めるのはあくまでも購入するユーザーであって、トヨタではないという原則を強調していた。売れるEVを市場に送り出すにはどうしたらいいのか。次回はそのためにトヨタが打ち出した施策をひもといていきたい。