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電池は供給できるのか?

 今回の発表は見どころがいくつもある盛りだくさんな内容なのだが、注目点を絞ると次の3点になるだろう。

  1. 電動車の普及見通しを5年間程度前倒しする
  2. CATLとの提携に踏み切る
  3. EVをビジネスとして成立させるビジネスモデルの構築に本格的に着手する

 EVの普及に懐疑的だったトヨタが、前回計画の発表からわずか1年半後になぜ“心変わり”したのか? 

電動車の普及目標を2017年12月に発表した従来計画より5年前倒しした(資料:トヨタ自動車)

 今回の発表の注目点として挙げた「電動車の普及見通しを5年間程度前倒し」と「CATLとの提携発表」の間には関連がある。「5年間程度前倒し」にはCATLとの提携が不可欠だったのだ。これまで、フォルクスワーゲン(VW)に代表される欧州メーカーや予測機関がEVの急激な生産増やシェアの拡大を発表してきたが、それだけのEVの生産を可能にする電池をいったい誰が供給するのかを疑問視する声は少なくなかった。

 例えばVWグループはちょうど3年前の2016年6月に発表した2025年までの中期経営戦略「TOGETHER STRATEGY2025」の中で、「2025年までに、EVの年間世界販売を最大300万台へ引き上げる」という目標を明らかにした。150万台を中国で、残りの150万台をそれ以外の地域で販売することを計画している。これはグループ世界販売台数のほぼ25%をEVに置き換える計画で、わずか9年でEV販売の比率をそこまで引き上げられるのか、懐疑的に見る向きも多かった。その理由の1つが「電池が足りるのか」ということだ。

 簡単な計算だが、300万台のEVに、航続距離500kmを想定して50kWhの電池を積んだとすると、必要になる電池の容量の合計は150GWhにもなる。車載用リチウムイオン2次電池の世界市場の規模は2016年の時点で46.6GWh(矢野経済研究所調べ )だったから、VWの計画はこの3倍の量を1社だけで使うことになる。では150GWhの電池工場を建設するのにどの程度の投資が必要か。

 これもあくまで目安にすぎないが、米テスラは35GWhの生産能力を備えた「ギガファクトリー」を建設するための総投資額を50億ドルと発表している。この数字を援用すれば、150GWhの生産能力を備えた工場を建設するのにかかる投資額は214億ドル(1ドル=110円換算で2兆3540億円)という膨大な額になる。

 年間300万台のEV向けの電池を10年間生産したとしても、工場の償却費用だけで車両1台当たり8万円弱に上る計算だ。10年というのは短いと感じるかもしれないが、電池の技術も日進月歩だから10年以上同じ設備を使い続けると考えるのは非現実的だろう。

 これだけの費用を負担して電池の生産に乗り出す電池メーカーはあるのか、そういうメーカーがあったとして、もくろみどおりEVが売れなかった場合のリスクを誰が負担するのか。2016年にEVの生産拡大をVWが発表した当時、VWはディーゼル不正事件の悪いイメージを払拭する必要に迫られていたから、その計画の意図はよく理解できたのだが、その実現可能性となると、筆者もいささか疑問符をつけざるを得なかった。