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 「これはTNGAより面白いな」。ダイハツ工業の新技術「DNGA」を見ての感想だ。TNGAとはトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー、DNGAはダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャーの略で、それぞれの会社の新世代の自動車技術の総称である。

「DNGA」を最初に採用する7月発売予定の新型「タント」(写真:ダイハツ工業)

 トヨタのTNGAについては、すでにこのコラムでも何回か取り上げている(例えば「トヨタ筆頭に日本メーカーの商品力が強まる年」)が、これはトヨタの言い方を借りれば「もっといいクルマ」を造るための包括的な取り組みである。単にエンジンやプラットフォームを刷新するだけでなく、クルマの開発プロセスから、製造工程までを含めた全車的な取り組みを指す。

 DNGAは、単純にいえばTNGAのダイハツ版である。ただし、高級車から小型車まで幅広く商品をそろえるトヨタに対し、軽自動車~小型車を主力商品とするダイハツではおのずと商品に求められる要件が異なる。そこでダイハツ独自の取り組みとしてDNGAの開発に取り組んできたわけだ。DNGAの特徴は以下の3つに整理できる。

(1)軽自動車から小型車まで設計思想を共通化した「一括企画開発」を採用
(2)車体、エンジン、変速機、サスペンションなど車両を構成する要素をすべて刷新することで車両の性能を大幅に向上
(3)将来の電動化やコネクテッドサービスの実現などを見据えた設計構想の盛り込み

 以下、順にその内容を見ていこう。

将来の商品展開を見越して共通化

 軽自動車から小型車まで設計思想を共通化する「一括企画開発」とは、あらかじめ将来の商品展開を企画して車体構造やエンジン、サスペンションなどを開発する取り組みをいう。これはTNGAだけでなく、ドイツ・フォルクスワーゲンの「MQB」やマツダの「SKYACTIV」、日産の「CMF」など、各社の新世代技術に共通する特徴だ。

 一括企画は過去の部品共通化の反省から生まれた。従来、部品の共通化と車種の多様化を両立する手法として、世界の完成車メーカーは「プラットフォームの共通化」を進めた。しかし、例えばまずハッチバック車に新プラットフォームを採用し、これをSUV(多目的スポーツ車)やミニバンに横展開しようとすると、寸法の変更や部品の補強などでかなりの設計変更が必要になることが多く、なかなか思惑通りに部品の共通化率が高まらなかった。

 そこでDNGAの一括企画では、エンジンの取り付け位置や車体の骨格配置、乗員の着座位置など、車両の設計で重要な部分で、軽自動車からAセグメント(1.0Lクラス)、Bセグメント(1.3Lクラス)を含むすべての車両で共通にできる部分と車種により変更する部分をあらかじめ一括で決めておき、すべての車種を共通の設計思想に基づく「相似形」で開発することで、開発の効率化と部品の共通化を図っている。それぞれのセグメントで、部品の共通化率は75%以上になるという。

 また開発の効率化により新型車の投入ペースをこれまでの約1.5倍にスピードアップし、新プラットフォームをベースとした新型車を2025年までに15ボディタイプ・21車種発売する。これらの中には新興国向けの車種も含まれる。これまで新商品や新技術はまず日本で展開し、そのあと新興国に展開していたが、DNGA導入後は日本と新興国に同時に新商品・新技術を投入する。もはや日本の「お下がり」を新興国に展開する時代ではないということだろう。