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 そして、スプリットモードでの変速比は、歯車機構を通る動力とCVTを通る動力の比率によって決まり、CVTでの変速比が低くなるほど歯車機構を通る動力の割合が増え、CVTでの変速比が最も低い2.23になったとき、変速機全体としての変速比は0.3にまで高くなる。この結果、スプリットモードまで含めた変速比幅はCVT単独の5.3に対して7.3に拡大する。分かりにくいかもしれないが、スプリットモードではCVTでの変速比が低いほど変速機全体での変速比は上がっていくのである。これまでのCVTが「片道だけ」を使っていたのに対して、D-CVTはCVTを「往復」で活用することで広い変速比を得られるのが特徴だ。

 このスプリットモードを活用して変速比の幅を広げるというアイデアそのものは古くから知られている。例えば日産自動車が1999年に「セドリック」「グロリア」で実用化したハーフトロイダルCVT(ベルトではなく円盤とローラーを使って動力を伝達するCVT)は日本精工が開発したものだが、変速比幅が4.3程度であまり広くないという難点を抱えていた。この難点を解消するために日本精工はスプリットモードを組み込んだハーフトロイダルCVTを開発し、「パワースプリット」という名称で商標まで取得している。もう20年近く前のことだが、筆者がこのパワースプリットの取材で日本精工を訪れたときのことを、今回のD-CVTは図らずも思い出させてくれた。

 ただし、ベルト式CVTにスプリットモードを組み込んだ例はまだなく、D-CVTが商品化されれば世界初になる。これが実用化すれば、高速域での伝達効率の低さが泣き所だったCVTの難点が解消することになり、期待は大きい。実際ダイハツ工業によればD-CVTは同社の従来CVTに比べると高速域での伝達効率が8%向上するうえ、エンジンの回転数も低くできることから、エンジンの改良分も含めて時速100kmで走行しているときの燃費を19%も向上できるという。

 筆者は現行のプラットフォームを使う「ムーヴ」や「ミラ イース」の走りを高く評価しているだけに、DNGAでどの程度改良が進むかに大いに興味を持っている。まずDNGAが採用される新型「タント」で、早くその走りを確かめてみたい。