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CVTを行きと帰りで利用する

 一方のD-CVTは今回の取材で一番感心させられた新機構だ。CVTは2つのプーリーの間で金属ベルトの巻き掛け半径を変えることで、無段で変速比を変えられる自動変速機だ。変速ショックがなく滑らかな動作が可能で、また運転条件に応じた最適の変速比を選べるので燃費もいいという特徴があり、特に日本車では多く使われている形式だ。

新開発の「D-CVT」(写真:ダイハツ工業)

 一方で、加速時の「ダイレクト感」が低い、変速比幅を大きくしようとするとプーリーも大きくなってしまう、プーリーをベルトに押し付けるのに油圧が必要で、高速域ではこの油圧を大きくする必要があり、油圧ポンプでの損失が大きくなって伝達効率が下がるなどの課題がある。この課題を克服するため、これまでに低速域ではベルトではなく歯車機構で動力を伝達してダイレクト感を高める(トヨタ自動車の「Direct Shift-CVT」)、CVTと2段変速機を組み合わせて変速比幅を広げる(スズキが採用するJATCOの「CVT7」)などの工夫がされてきた。

 逆に最近では日産の新型「DAYZシリーズ」およびその兄弟車種である三菱自動車の「eKシリーズ」のように、変速機の小型・軽量化を重視して副変速機付きCVTから副変速機のないタイプに戻す動きも出ている。こうした中で、今回ダイハツはDNGAの一環として新たに開発したD-CVTで、歯車機構とCVTを組み合わせることで変速比幅の拡大と伝達効率の向上を実現した。

 歯車機構とCVTを組み合わせるという発想はトヨタのDirect Shift-CVTと同じだが、Direct Shift-CVTが低速域を歯車機構、中・高速域をCVTで分担しているのに対して、D-CVTの機構は中低速域では通常のCVTとして機能するのだが、高速域で動力伝達に主に歯車機構を使って伝達効率を高めており、使い方としてはある意味正反対だ。

 またD-CVTでは単純に速度領域でCVTと歯車機構の分担をしているわけではない。確かに低速域ではCVTだけで動力を伝達しているのだが、CVT単独の最も高い変速比(入力回転数/出力回転数の比、数字が少ないほうが同じエンジン回転数に対してタイヤの回転数が高くなるので変速比が“高い”と表現する、D-CVTでは0.44)に達すると、エンジンからの動力をCVT経由と歯車機構経由の2つに分け、この2つの経路を通ってきた動力を遊星歯車機構で合成してタイヤに伝える。この、動力を2つの経路に分けるモードをダイハツは「スプリットモード」と呼んでいる。

CVTだけで動力を伝達する「ベルトモード」と歯車機構(ギア)とCVTの2つの経路に動力を分けて伝達する「スプリットモード」を備えているのがD-CVTの特徴(図:ダイハツ工業)