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大胆さと慎重さと

 だいぶ説明が長くなってしまったが、大胆さと慎重さに話を戻すと、まず大胆と思ったのは国内の完成車メーカーとしては初めて「手放し運転」を可能にしたことである。これには筆者も相当な驚きを感じた。というのも「手放し運転」についての国際基準は現在策定中だからだ。自動運転技術に関しては国連欧州経済委員会(UN-ECE)の政府間会合(WP29)において国際調和活動を実施しており、「手放し運転」を可能とするために車両が備えるべき要件について国際基準はまだ発効していない。その段階で手放し運転の商品化を決めたことに「大胆さ」を感じたのだ。

 もちろん、国連の政府間会合で国際基準が定まっていないからといって、国内での「手放し運転」ができないわけではない。以前このコラムの「2018年はエンジン革新の年」でも触れたのだが、米GMは国連での議論を待たず、既に手放し運転を実用化している。2017年夏に発売したキャディラックブランドの最高級車種「CT6」から搭載を始めた運転支援システム「スーパークルーズ」がそれだ。

 米国では国連の議論の行方に左右されず、NHTSA(米国運輸省高速道路交通安全局)が独自にこれらの装備の認可を判断しており、GMは独自の安全対策によって手放し運転を実現したわけだ。ちなみに、GMのスーパークルーズも日産のプロパイロット2.0と同様に室内にカメラを備え、ドライバーが前方を注視しているかどうかを監視している。

 ただし米国は以前から国連の議論に左右されず独自に様々な技術の許認可を判断しているのに対して、日本は国連の議論を待つ傾向が強かった。だから今回の日産の判断には驚いたのだ。もっとも、最近では日本が独自の判断をする場面も増えており、例えば5月28日に成立した改正道路交通法では、システムが一定の要件を備え、緊急時にドライバーが運転を代われる状態であれば、ドライバーが周辺監視やシステム監視の義務から解放される「レベル3」の実用化が可能になった。これも国連の国際基準の策定に先立って日本で決定された内容だ。

 一方で「慎重」だと感じた点は、依然としてプロパイロット2.0が「レベル2」にとどまる点だ。すでに国内では先に触れたようにレベル3の車両を商品化するための法規的な環境は整えられた。ホンダは2020年には高速道路の渋滞中に限ってレベル3の自動運転を実現する技術を商品化する計画だ。

 これに対してプロパイロット2.0の開発責任者である日産 AD/ADAS先行技術開発部部長の飯島徹也氏は今回の発表で「(プロパイロット2.0は)現在ある技術を最高レベルでインテグレーション(統合)したものであり、この先の段階を簡単にやることはできない。ある(一定の)時間がかかる」と発言しており、少なくとも2020年にレベル3まで可能にした「プロパイロット3.0?」が出てくる可能性は低そうだ。レベル3は、作動中に事故を起こせば基本的にはメーカーが責任を負うことになり、慎重な姿勢を示すことは理解できる。しかし、すでにドイツ・アウディも最高級車「A8」で高速道路での渋滞中にレベル3を実現することを目指すなど、内外でレベル3を実用化する動きが活発化している。自動運転でリーダーを自任する日産のことだから、慎重でいられる時期は意外と短くなるかもしれない。