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 熱に強く、しかも熱発生そのものを抑えられることから、現在のリチウムイオン電池と同じ正極材料や負極材料を使っても、全固体電池は同じ容量なら電池の容積を半分~1/3に小型化できる可能性があるといわれている。内部の抵抗が低いことは、あとで説明するように急速充電でも有利だ。

 将来的には、さらに電池を小型にできる可能性もある。それは正極や負極に使える材料系の選択の幅が広がるからだ。例えば負極に硫黄系の材料を使うと、理論的には現在のリチウムイオン電池の負極よりも同じ重量当たり5~10倍のリチウムイオンを蓄えることができるが、現在の有機電解液では硫黄が電解液中に溶け出てしまうため使えない。固体電解質なら硫黄系材料の負極が使える。

 あるいは、現在のリチウムイオン電池の電圧は3.2~3.7Vだが、これを5Vとか6Vに高められれば、直列につなぐセルの数を減らして電池を小型化できる。しかし、電池の電圧を高めると従来の有機電解質は分解してしまうため、高電圧化には限界があった。固体電解質はこのように、正極や負極に使う材料の自由度を高め、エネルギー密度を大きくする可能性を広げる。

国家プロジェクトも始動

 こうした可能性に注目し、国家プロジェクトも始動した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年6月、全固体リチウムイオン電池を早期に実用化するための研究開発プロジェクトの第2期をスタートさせた。同プロジェクトでは、自動車・蓄電池・材料メーカー23社および大学・公的研究機関15法人が連携し、全固体リチウムイオン電池の要素技術の開発や、試作品を使った量産プロセス、電気自動車(EV)搭載への適合性を評価する技術の開発に取り組む。

 同プロジェクトでは2030年ごろの量産を目指し、現在のリチウムイオン電池に比べて体積エネルギー密度で3倍(600Wh/L)、急速充電時間を1/3(10分)、そしてコスト1/3(1万円/kWh)を狙っている(いずれも電池パックでの数字)。電池パックというのは、複数の電池セルを接続して金属などの容器に収め、制御回路や冷却装置を取り付けたもので、車両に搭載できる状態にした電池を指す。先に説明したように、全固体電池は従来の液体電解質を使ったリチウムイオン電池に比べて熱に強いため、セル同士の隙間を小さくしたり冷却装置を省いたりできる。これが電池パックの小型化、ひいては体積エネルギー密度の向上につながる。

 また、10分という高速充電の実現でも全固体電池は有利だ。先に全固体電池では複数のセルを積み重ねた構成にすることで、複数のセルを配線で直列につなぐよりも電気抵抗を大幅に下げられることを紹介した。この構造は大電流を流すのに適しており、電池の高出力化(単位時間当たりに流せる電流の量を増やすこと)だけでなく、短時間で充電するうえでもメリットがある。