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 ただしライダーが検知できる範囲は、通常100m以内で、それ以上遠くの物体の検知はレーザー光が減衰するため難しい。また、雨や雪など、悪天候になると検知範囲はさらに狭くなる。しかし、高速道路などを走行する場合には200m以上遠くの物体を検知する必要がある。これがライダーだけでなくミリ波レーダーも必須な理由だ。

 しかしミリ波レーダーは物体との距離は把握できても、レーザー光より指向性が低いのでその物体の形状は分からない。それどころか現状のミリ波レーダーは、そもそもその物体がどの位置にあるのかを判別することさえ難しい。ライダーは物体の位置や形状は分かるが、色を判別する能力に限界があるので標識や道路表示を読み取るのは難しい。その意味でカメラの搭載も必要だ。三つの種類のセンサーの分担について大雑把にいえば「遠くの物体を検知するミリ波レーダー、近くの物体を検知するライダー、そして物体が何であるかを理解するためのカメラ」ということになる。

自動運転車の例。これは日産自動車の実験車両だが、車体のいたるところにカメラ、ミリ波レーダー、ライダー(日産はレーザー・スキャナーと呼ぶ)を搭載していることが分かる(写真:日産自動車)

どのセンサーからのデータを信頼するか

 従来のシステムでは、「遠い物体との距離は主にミリ波レーダー」「中近距離の物体との距離はライダー」「物体が何であるかはカメラ」というようにそれぞれのセンサーの分担を決めていた。しかしそれだと、例えば濃霧などに対してはカメラやライダーの性能が大きく落ちてしまうため、システムが正常に作動しなくなってしまう場合が多かった。 

 これに対し、今回三菱電機が開発した技術は最初から各センサーの役割を固定してしまわず、その瞬間その瞬間で、最も信頼できるセンサーはどれかを評価しながら、リアルタイムでセンサーごとの分担を変えてしまうという点が新しい。具体的には、3種類のセンサーで同じ物体の速度・車幅・向き・距離などのデータを計測し、次の瞬間にその物体がどこの位置に移動するかを予測する。そして次の瞬間に測定した実際のデータと比較し、予測データと実際のデータの誤差が最も少ないセンサーが、その時点で最も「信頼度」が高いと判断し、この信頼度に基づいてどのセンサーからのデータを重要視するかを判断するというものだ。

 例えばある時点で物体の「位置」に関してはライダーの計測データの信頼度が最も高かったが、その物体の「向き」や「速度」についてはミリ波レーダーからデータの信頼度が最も高いとしたら、位置に関してはライダーの、物体の向きや速度についてはミリ波レーダーからのデータを使って判断する。これにより、従来のように各センサーの役割が固定されているシステムに比べて動作範囲が拡大するという。

 日本自動車研究所の特異環境試験場で実証実験を実施したところ、冒頭で紹介したように毎時雨量80mmという猛烈な雨の中で、最大時速40km で走行しているときでも自動ブレーキが作動し、障害物との衝突回避が可能であることを確認した。雨が降っていて、なおかつ夜間の場合でも作動することも確認している。同様に、視界が15mほどしか利かない濃霧の中で時速10~15km で走行しているときも、自動ブレーキが作動することを実証したという。さらに、カメラが働きにくい逆光の条件でも、時速10~40km での作動を確認した。これらの条件では、いずれも従来のシステムだと自動ブレーキが作動しなかったという。三菱電機はこのシステムを改良して2023年度以降に実用化することを目指している。