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 なので新型インサイトの発表会でも会場にいた説明員の何人かにその疑問をぶつけてみたのだが「シビックハイブリッドにするという考え方もあると思うが、今回は別車種にしようということになった」というのが正式見解らしく「なぜ別車種にしたのか」という答えをなかなか聞くことができなかった。

 そういう中で比較的筆者に納得感のあった答えが、ある説明員の「ハイブリッド車にするとやはりどうしても価格帯が高くなってしまうので、客層の年齢層も高くなる。現行型のシビックはかなり若向きのデザインを採用しており、それで成功しているのだが、年配のユーザー向けにはより落ち着いたデザインを採用する必要があると考えた」というものだ。

 確かに3代目インサイトのデザインは、現行型シビックに比べて落ち着いた印象を与えられている。全幅いっぱいに幅の広いメッキモールと上下の幅の薄いヘッドランプを配置したフロントデザインは上品ではあるが、眼光の鋭いヘッドランプを採用したシビックセダンのほうがデザイン自体はアグレッシブに感じる。リア周りも、トランクリッドのスポイラー部分にまで回り込んだ斬新な形状のテールランプを採用したシビックセダンに比べると、インサイトのデザインは一般的なものでおとなしく見える。車両全体のプレスラインも、シビックセダンのほうがより鋭角的で、インサイトのほうが柔らかい印象だ。

 そうした印象は内装でも同じだ。先程も触れたようにインサイトとシビックセダンで基本的なレイアウトは共通なのだが、インサイトのほうが柔らかい曲面で構成されており、メーターパネルも3眼のオーソドックスなデザインを採用しているのに比べると、デジタルメーターを中央に配置したシビックセダンのほうが新しさを感じさせる。

まったく新しいハイブリッドシステム

 このように、3代目インサイトは兄弟車種のシビックに比べると上品ではあるが控えめな印象で、ハイブリッド専用車としての先進性をことさらに強調するわけでもない。しかし実は搭載するハイブリッドシステムはまったく新しく、今後のホンダのハイブリッドシステムの屋台骨を担うとみられるものだ。

 新型インサイトに搭載されているハイブリッドシステムは「SPORT HYBRID i-MMD」といって、システム自体はすでに以前から「アコードハイブリッド」や「オデッセイハイブリッド」、最近では「ステップワゴンハイブリッド」に搭載されている。ホンダにはほかに、フィットハイブリッドなど1クラスの車種に搭載する「SPORT HYBRID i-DCD」というシステムがあるのだが、両者の違いは、i-MMDが駆動力のほとんどをモーターから得ているのに対し、i-DCDのほうはエンジン主体のシステムであることだ。

 i-MMDは発電用と駆動用に大出力モーターを2基搭載し、低中速領域ではエンジンをもっぱら発電に使い、駆動力はモーターから得る。エンジンを常に効率のいい領域で運転することで高い燃費性能を実現するのが狙いだ。ただしおおむね時速70km以上の高速クルージング時にはエンジンと駆動輪を直結したほうが総合的な効率が高くなるため、エンジンと車輪をクラッチでつなぐ。電池容量が多いときにはエンジンを停止し、モーターのみで走行することもできる。

i-MMDの三つの運転モード。エンジンが停止して電池のみで走行するEVドライブモード(左)、エンジンを発電のみに使うハイブリッドドライブモード(中央)、エンジンと車輪を直結するエンジンドライブモード(右)(資料:ホンダ)

 これに対してi-DCDは7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)の内部に比較的低出力のモーター/発電機を内蔵し、エンジンの効率の悪い領域ではモーターでエンジンの駆動力を補助することで燃費を向上させる。発電用と駆動用に大出力モーターを2基搭載するi-MMDに比べると、小型モーター1基の追加で済むためシステムが小型化でき、コスト面でも有利だ。ただしi-DCDはエンジン、変速機、モーターという三つの要素を最適に制御するのが難しく、ホンダがこのシステムで度重なるリコールを出したのはまだ記憶に新しい。また燃費向上効果もi-MMDに比べると限定的だ。