
展示した車両「e.GO Mover」は5~6人乗りの箱型EVで、人と荷物の両方の移動サービス向けを想定している。2019年末からまず400台を生産し、交通サービスを手がける仏Transdevに提供する。Transdevは日本では知られていないが、同社のサービスは20カ国で1日に1100万人が利用するという。最初の1年程度は自動運転ではなく、手動運転で試験運用する。1年後からはレベル4の、運転席に人間のドライバーがいない自動運転での運用を目指すという。その後徐々に生産を拡大し、年間数万台の生産を目指している。ZFは、今後5~7年でこのような車両に対する需要は年間100万台規模に達すると予想している。
シェフラーは「真横に動くクルマ」
ドイツの大手部品メーカーであるシェフラー・グループはCES 2019で「真横に動けるコンセプト車」を使ったデモ走行を披露した。デモ走行を披露した車両は、このコラムの第120回でも紹介した「Schaeffler Mover」だ。昨年秋に日本で公開したときにはまだモックアップで実走行はできなかったが、今回は実際に走る車両を展示したのが特徴だ。
この車両は、モーターを車輪に内蔵したインホイールモーターを採用しているのが特徴。しかもモーターだけでなく、サスペンションと車輪も一体化したモジュールを開発、このモジュールを各輪に合計4基搭載することで、通常の車両ではできない動きを可能にした。例えば、各輪に駆動力を伝えるドライブシャフトが不要なことから、車輪を90度操舵できる。

車輪を真横に向けることができるので、上の写真のように車両を真横に動かすことが可能だ。縦列駐車のとき、前後にスペースの余裕がなくても車両を真横に動かして狭いスペースに駐車できる。あるいは前輪を右向き、後輪を左向きにすることでその場で回転するような従来の車両では不可能な動きが可能になる。
そもそも車両に前後方向の区別がなく、シートも向かい合わせに配置されているので、前進と後退の区別もない。このため狭い路地に入ったときにもバックで出てそのまま走り続けることができる。シェフラーはどういう目的でこのコンセプト車両を作ったのか。会場の担当者によると、自社で車両を製造し、移動サービスに参入するという考えはないようだ。「我々のコア・コンピタンスはパワートレーンやシャシーシステムであり、ソフトウエアやサービスではない」(担当者)。今回のCESにコンセプト車両を持ち込んだのは、同社の技術力や要素技術をアピールし、興味を持ってくれるようなビジネスパートナーを探すのを目的だとしている。
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