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 日産が言う「見えないもの」には二つの種類がある。一つが周辺のインフラから提供される情報、もう一つが「メタバース」から提供される情報である。メタバースって何? と思う読者も多いだろうが順に説明していこう。

 まずインフラから提供される情報だが、同社はプレゼンテーションの中でいくつかの例を示した(I2Vに関する動画による解説動画)。例えば、道路を走っているときに、建物の陰から近づいてくるクルマを周囲の風景に重ねて表示したり、あるいは高速道路の合流地点でトラックの陰に隠れて見えない2輪車を可視化することで衝突を避けたり、自分の進路の先に倒木や渋滞があるのを可視化して回り道を促したりといった場合だ。

 また、道路を走っていて霧や雪のために路面が見えにくくなっているときには、路面の3次元的な形状を実際の風景に重ねて表示して安全な走行を支援する。さらには、立体駐車場に入ったときに何階のどの場所に空きスペースがあるかを表示することで、駐車にかかる手間を省けるようにする。この「周囲の風景に重ねて表示する」ことはインストルメントパネルに搭載したディスプレイでは無理で、どうしてもARゴーグルのようなデバイスが必要になる。

ARゴーグルを通じて、周囲の景色に情報を重ねて表示する

メタバースとは何か?

 そして、筆者がより興味を惹かれたもう一つの「見えないもの」がメタバースから提供される情報である。メタバースというと分かりにくいが、10年ほど前に「セカンドライフ」というインターネットゲームがちょっとした話題になったのを覚えている読者もいるだろう。セカンドライフでは、ユーザーは「アバター」という自分の分身になって仮想の世界で仮想の生活を送ることができる。筆者は知らなかったのだが、セカンドライフは現在でも存続しており、こうしたインターネット上の仮想世界を現在はメタバースと呼ぶことが多くなっているのだそうだ。そして、このメタバース内では様々なコミュニティが生まれており、現実世界では他人のアバター同士が活発なコミュニケーションを繰り広げていたりするらしい。

 このメタバースとクルマを結びつけると何が起こるか。今回のCESでは運転の上手なアバターが自分の車両の助手席に座って、運転の指導をしてくれるというデモが実演された。もちろん実際には助手席には誰も座っていないのだが、ARゴーグルを通して見える助手席のアバターに運転を教わるというのは、筆者のような古いタイプの人間にはかなりシュールに感じられた。当然、運転を指導してくれる人もARゴーグルを装着し、助手席に座っているかのように見えていることは言うまでもない。

運転の上手なアバターが助手席に座って運転を指導してくれる