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 そこで紹介されたのは徹頭徹尾、M-Byteの最大の特徴であるインストルメントパネルに搭載された48型という大型液晶を使って「どんなエクスペリエンスを乗る人に提供するか」だったのである。つまり、このクルマの価値は「大型の液晶ディスプレイにある」と主張しているわけで、これは「クルマを操る喜び」を追求してきたこれまでの完成車メーカーから見たら噴飯ものかもしれない。

BYTON M-Byte量産型のインストルメントパネル。48型の大型液晶パネルを搭載するほか、ステアリングやセンターコンソールにも液晶パネルを備える(写真:BYTON)

自動運転社会を見据える

 しかしこうした価値転換は不可避だと筆者も考える。それは、今後自動運転技術の普及が見込まれているからだ。乗る人が運転の義務から解放されれば、クルマの中で何をして過ごすかがクルマの主要な付加価値になる。しかし自動運転の時代を待たなくても、大型の液晶ディスプレイを搭載することで、クルマはこれまでにない価値を提供できることをBYTONは今回のプレスコンファレンスでアピールした。

 ではどんな価値を提供できるのか。プレスコンファレンスの会場ではVR(仮想現実)ゴーグルを装着して、同社が提案するエクスペリエンスのデモを体験できた。例えば、家族でサファリパークを走行しているときには、そのサファリパークにいる動物たちの詳しい知識が大型のディスプレイに表示され、子どもたちはそれを学びながら見学できる。

 あるいは、渋滞中に仲間と大型ディスプレイの表示を見ながら皆でカラオケを楽しむこともできる。仲間でサーフィンに出かけたときには、大型ディスプレイの情報でいい波が来るのを待つ。しかし筆者が一番面白いと思ったのは、停まっているクルマで、子どもたちが大型ディスプレイや後部座席に設置されたディスプレイを使って、宇宙を駆け巡るゲームを臨場感たっぷりに楽しむ場面だ。走ることがこのクルマの本質的な価値ではないと主張しているように筆者には感じられた。

見えない路面を表示

 BYTONに加えて、筆者が今回のCESで印象的だったのが日産が展示した「見えないものを可視化する技術(Invisible‐to‐Visible、I2V)」である。これもまた、視覚からの情報により新しいエクスペリエンスを乗員に提供しようという点でBYTONと共通するのだが、違いはBYTONの大型ディスプレイを使うのに対して、日産はAR(拡張現実)ゴーグルの使用を想定している点にある。

Invisible‐to‐Visibleをテーマにした日産自動車の展示