このところ仕事初始めの恒例になっているのだが、米国ラスベガスで毎年1月初めに開催される世界最大級の家電見本市「CES2019」に行ってきた(昨年のCESレポート「トヨタがいよいよ『モビリティサービス』に本気」「『クルマ以外』に自動車業界が注力するのは?」を参照)。

今回は、ことしのCESで筆者が面白いと思った二つの展示に的を絞って紹介したい。その一つが中国BYTONの出展したEV(電気自動車)であり、もう一つが日産自動車の発表した「見えないものを可視化する技術」である。どうしてこの二つに注目したかといえば、今回2社が発表したこれらの技術が、大げさに言えば“将来のクルマの価値”の方向を指し示していると思ったからだ。
大型ディスプレイが最大の売り物
BYTONは、元ドイツBMWの出身者が創業したことで話題になっているEVベンチャーで、2016年の創業から3年足らずという新興企業であるにもかかわらず5億ドルもの資金を調達し、2019年末から最初の製品である「BYTON M-Byte」の量産開始を計画している。同社は南京に生産能力30万台という巨大な工場を建設中で、M-Byteに加え、今後2021年に2モデル目のセダン「K-Byte」を、2023年に3番目のモデルを発売することも併せて発表した。

じつはBYTONは2018年1月のCESにもブースを出展し、コンセプトモデルを展示していた。しかしこのとき筆者は、中国で泡のごとく出現しては消えるEVベンチャーの1社と思い、一応ブースは見たものの、あまり気に留めていなかった。実際、昨年のCESにBYTONと同様に「中国版テスラ」として鳴り物入りで登場し、多くの報道関係者の関心を集めていた中国ファラデー・フューチャーは、ことしのCESでは影も形もなかった。ブルームバーグの2018年10月の記事は、ファラデーが資金トラブルに陥っていることを伝えている。
そうした中で、ことしBYTONはプレスコンファレンスの中で「M-Byte」の量産モデルの一部について説明した。また南京工場のパイロットラインでの生産検討の様子もビデオで伝え、2019年末の量産開始に向けて、準備が順調に進んでいることをアピールした。
今回のBYTONのプレスコンファレンスに参加してつくづく感じたのは、同社がクルマの価値転換をはっきりと認識してクルマづくりをしていることだ。BMW出身者が創業した企業にもかかわらず同社のプレゼンテーションは、BMWのスローガンである「駆け抜ける喜び」が象徴するようなクルマを運転する楽しみについては一切触れなかった。
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