日立製作所が約53%の株式を保有する上場子会社、日立金属を売却する検討に入ったことが日経ビジネスの取材で明らかになった。売却に向け外資系証券会社をファイナンシャルアドバイザーとして雇い、入札の準備に入った。日立金属は日立製作所グループの「御三家」の一角。同じく御三家の一つだった日立電線は2013年に日立金属と合併しており、もう一つの日立化成は今年、昭和電工に買収されている。日立金属の売却が進めば、「御三家」がすべて日立グループの外に出ることになる。

日立製作所は上場子会社の株式売却を進めており、日立金属と日立建機の2社が残っていた(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
日立製作所は上場子会社の株式売却を進めており、日立金属と日立建機の2社が残っていた(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 日立は「選択と集中」を旗印に、上場子会社の整理を進めている。これまでに日立化成、日立キャピタル、日立物流、日立工機、日立国際電気などの上場子会社の株式を売却しており、残る上場子会社は日立金属と日立建機の2社となっていた。グループ再編成の最終段階が近づく。

 日立金属の時価総額は6000億円台で、大型のM&A(合併・買収)案件になる。今秋にも買い手候補を募る入札を開始する計画だ。

 日立金属の足元の業績は厳しい。20年4~6月期(国際会計基準)の最終損益は同期間としては11年ぶりとなる33億円の赤字で、21年3月期通期では120億円の赤字(前期は376億円の赤字)を見込む。新型コロナウイルスによる景気悪化もあり、自動車向けを中心とした特殊鋼や素形材などが苦戦している。

 だが、コロナ前から業績には異変が生じていた。楽観的な需要見通しのもと、磁石事業で自動化投資を重ねたことが裏目に出て赤字を招いている。14年に1000億円以上を投じて買収した、自動車用ブレーキ部品などを手掛ける鋳造品子会社の米ワウパカ・ファウンドリーも不振に陥り足を引っ張っている。

 今年4月には検査データの不正も発覚している。特殊鋼製品などの検査値を顧客の要求範囲に収まるよう10年以上にわたり書き換えていたというものだ。責任を取り5月末に佐藤光司社長が辞任。日立製作所のCFOだった西山光秋氏が4月に会長兼CEO(最高経営責任者)に就任していたが、社長も兼任する事態になった。

 だが業績不振や不祥事とは裏腹に、株価は高値圏を維持するなど「業績では説明できない水準」(証券会社アナリスト)が続いている。上場子会社の整理を進めている日立が日立金属をいずれ売却し、第三者がプレミアム(上乗せ)を付けて買収するのではないかという期待が先行しているからだ。

 「今の株価には既にプレミアムがかなり反映されてしまっている」(外資系ファンド首脳)というのが実態とみられる。買い手として考えられるのは同業他社や投資ファンドだが、日立化成のときのように入札が進むにつれ買収金額がつりあがるといったことは期待しにくいかもしれない。

 日立製作所が日立金属の売却に動くのは、同社の不振が理由ではない。力を入れているデジタル事業「ルマーダ」との親和性が低いためだ。日立製作所の東原敏昭社長は非中核事業であれば手放すという「選択と集中」の方針をここ数年徹底して貫いてきている。御三家といえども例外ではない。

 御三家の歴史は、日立製作所の3代目社長だった駒井健一郎氏にさかのぼる。駒井氏は各子会社がそれぞれ事業を拡大して上場を目指す分散経営を唱え、日立金属と日立電線が1956年、日立化成が1962年に分社した。日立金属が切り離されて御三家がグループから消えることになれば、日立にとっては新しい成長ステージに向けた大きな区切りを迎えることになる。

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