地上の生命の系統樹を知るように、宇宙の星々の系統樹を理解したい。今、私たちの目の前にあるこの世界の由来にもつながる壮大な問いを胸に抱き、星や惑星の形成に関して大きな成果を次々と挙げている気鋭の研究者、坂井南美さんの研究室に行ってみた!
(文=川端裕人、写真=内海裕之)
坂井南美さんは、生まれたばかりの赤ちゃん星、原始星の化学組成、特に有機分子を観測する中で、数々のブレイクスルーを成し遂げてきた。
冒頭で、「本音は、(宇宙の)はじまりから全部理解したい」けれど、「私たちの世界の物質的な起源、生き物が誕生するような環境がどうしてできたんだろう」「原子から分子ができて、複雑な分子ができて、いつか生命になったという化学組成の上での起源が知りたい」というモチベーションで、原始星の化学組成をさぐる電波天文学の世界へと足を踏み入れた。
では、そのような関心はどんなふうに培われて、深められてきたのか、最後になったけれど、研究に至る個人史をうかがっておきたい。
「私、いわゆる天文少女ではなかったんです。だから、『星座の何座はどこにある?』って聞かれても、そりゃあオリオン座ぐらいは知ってますけど、分からない方が多いです」
まずはそんなふうに笑いながら言った。
天文学者や宇宙物理学者は、古き良きプラネタリウムで解説されていたような星座の知識は、不必要というわけではないけれど、不可欠というわけでもない。よく知っている研究者もいれば、それほど関心がない研究者もいる。
「ただ、星空を見るのは好きで、というよりも、とにかく外で遊ぶことが好きだったんですね。小学校がわりと自然豊かなところで、クヌギの木とか、いっぱい木がある環境でした。そこで、木登りして風を感じてみたり、空を見ながら居眠りしたり。あと、虫も好きで、セミ捕りどころか、カブトムシを筆箱の中で飼ってたり、ダンゴムシを入れてたりして、先生に怒られてました(笑)。そんな中で、なんでこんなすごい自然の世界が、でき上がってるんだろうという興味が生まれたんですよね」
東京都内ではあるそうだが、かなりワイルドな小学生時代だ。そういった経験を通じて、この世界が、理屈抜きで「素晴らしい」ものだという確信を培うことができたのではないかと推察する。
と同時に、すでに天文学への興味の萌芽はあったそうだ。
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