2019年4月、日本の労働力人口が減るなかで在留資格「特定技能」が導入された。その一方、低賃金や長時間労働など、外国人労働者の過酷な実態が話題に上っている。日本に暮らす外国人たちは今、どんな状況に置かれ、どんな問題があるのだろうか。移民政策を専門とし、外国人支援にも取り組む鈴木江理子先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)
「今更きけない」レベルの基本的なことを、鈴木さんに教えてもらった。
旧植民地出身のオールドタイマーから、今、問題になっている「留学」「研修」「技能実習」、そして、「特定技能」についても駆け足で見た。
では、現時点で、鈴木さんが問題視しているのはどんな部分なのだろうか。
「政府は、特定技能の制度についても『移民政策ではない』と言い続けています。労働力はほしいけど、怪我したら帰ってください、病気になったら帰ってください、年をとったら帰ってくださいと。労働力としての有用性のみが評価されるわけです。その点では、『特定技能』の制度も『技能実習』と同じです。家族を呼べないのも同じですし」
なぜ政府が「移民政策ではない」ことにひたすらこだわるのか、直接の理由を語ったことがないため、よくわからない。ただ確実に言えるのは、技能実習から特定技能へと移行すると、最長で10年もの期間、日本で、単身、働き続けることになり、その間、日本で出会った相手と家族形成したいと願う若者もかなり出てくるだろうということだ。いや、たとえ5年きっかりであってもそうだろう。やはり実質的な「移民」受け入れにつながっていくのではないだろうか。
「実は、母国に家族を置いておけというのは、つまり、結局賃金も安く抑えることが可能になるということなんです。家族を呼べば、家族が暮らせるだけの賃金が必要になるので。私は家族が暮らせることはかなり大切なことだと思っています。途上国から来た人が、それも単身でしか働けないっていう状況を続けたら、その産業もそういった労働者に依存しつづけることになりますよね。一方で、日本で家族を養えるような環境なら、日本人もそこに戻ってくるかもしれません」
現状では、日本で家族形成をする「日本人」はとうてい働けない労働条件を容認してしまっているわけで、ならば、外国人労働者が家族を呼び寄せても暮らしていけるだけの待遇を実現すれば、それはそのまま「日本人も働ける」場所になっていくはずだ。実は外国人労働者をめぐる議論は、そのまま日本人労働者の問題と直結していることが多い。
それでも、制度は動き始め、また以前にもまして「外国人材の活用」が叫ばれる。
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