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昔は愚鈍とされていた恐竜。だが今は、鳥や哺乳類のような温血動物で、羽毛が生えていたものもいたことがわかっている。そこで、日本を含めた恐竜研究の変遷や、最新のトピックスを教わりに、日本の恐竜研究のパイオニアで国立科学博物館の特別展「恐竜博2019」の監修を務める真鍋真さんの博物館に行ってみた!

(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 恐竜の夏だ。

 国立科学博物館にて、「恐竜博」が開催される。

 これは数年おきに科博が主催するもので、最大のティラノサウルス標本であるスー(2005年)や、史上最大級の肉食恐竜とされるスピノサウルス(2016年)のように、世界的にも知名度が高く、また「初公開」の標本を見せてくれるという点で人気を博してきた。一方で、必ずしも派手ではないけれど、その時点で最新の恐竜学の「サイエンスとしての動向」をバランスよく伝えるように心配りされていることにも定評がある。

 今回の「恐竜博2019」も、大いに楽しみである。

 「看板」を張る主役級の標本は、まず、デイノケイルス(恐ろしい手、の意味)の全身骨格。長い間、大きな両腕の化石だけが知られており、巨大な3本の大きなカギツメなどから、どんなに恐ろしい恐竜だったろうと多くの人々が妄想を膨らませてきたいわくつきの存在だ。それが、実際のところ、草食のおとなしそうな恐竜だったと分かったという事実は、全身骨格を見上げながらしみじみと噛みしめるといいだろう。

デイノケイルスの前あし。「恐竜博2019」より。

 また、北海道でほぼ全身の化石が発見された「むかわ竜」もやってくる。これは、白亜紀後期に繁栄した草食恐竜のカモノハシ竜の一種で、全長8メートルと、現在、日本で「全身の8割以上の化石が見つかっている恐竜化石」の中で最大だ。恐竜博2019でははじめて、発掘地のむかわ町の外で展示されることになる。かつて日本では恐竜の化石など出ないと言われた時代があり、その後、あちこちで断片的な化石が見つかり始めて、今では、「むかわ竜」のような全身骨格として発見されることも出てきた。日本における恐竜新時代が始まっていることを意識させられる。

「むかわ⻯」 の全⾝実物化⽯。「恐竜博2019」より。

 そして、こういった派手な「看板」が、サイエンスとしての恐竜学の中でどんなふうに位置づけられ、どんな問題を提起するのかというのは、さらに興味深い問題だ。

 つまり、どんな背景から、このような特別展が生まれてきたのか。そういうことにぼくは興味がある。そこで、恐竜博2019の監修者で、国立科学博物館・標本資料センターのコレクションディレクター(分子生物多様性研究資料センター長兼務)の真鍋真さんを訪ねて、「2019年時点での恐竜学の最新の展開」について問うた。