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 お茶農家では鹿児島で大規模化が進んでいることが知られている。本格的な増産に取り組んできたのは1960年代後半からとされ、当初から大量生産を目的にしていた。こうした背景もあり、「鹿児島は製茶会社も機械化やオートメーション化が進んでおり、人手をかけない効率的な経営が目立つ。例えば、独立系の製茶会社の上位10社を調べたところ、鹿児島県の製茶会社はオートメーション化を経営上の特徴としていた」と山本准教授は話す。

 裏付けるのが売上高と利益だ。社員一人当たりの月間売上高を比べると、鹿児島が309万円であるのに対し、静岡は249万円にとどまる。

 社員1人当たりの月間利益金額で比べた場合にはその違いはさらに大きい。鹿児島が約6万5000円に対し、静岡は約1万5000円となっている。社数だけ比べると静岡のほうが圧倒的に多いが、経営データからは鹿児島の効率のよさが目立つ。東京商工リサーチ市場調査部の宮原拓也氏によると、「鹿児島茶は長年ブランド力がなくブレンド茶となってきたが、産地表記の厳格化が進むなかで品種改良が進み、表舞台に出てくるようにもなっている」という。

■社員1人当たり利益金額の平均値(万円/月)

 静岡の生産農家は中山間地が主体であり、茶畑は比較的規模が小さい。このため、人手をかけて生産する傾向がある。そしてこれに対応するように、静岡では地域ごとに小規模な製茶会社が多数残っている。

 静岡の小規模な製茶会社は仕入れ量や販売量が限られるが、自社専門のお茶農家と取引しながら、その会社ならではの特徴を持ったリーフ茶を製造する。静岡は緑茶の消費量が全国トップであることも知られている。小規模な製茶会社の存在は商品のバラエティーにつながり、地元のリーフ茶の消費を支えている可能性がある。

ペットボトル茶と規模拡大

 もちろん静岡にも規模拡大を進める製茶会社はある。

 社員数で見た場合、ベスト10に静岡のメーカーは3社あるが、このうち2社は扱い品目に大手メーカーに対するOEM(相手先ブランドによる生産)が含まれている。静岡以外にもOEMによって成長する会社はベスト10にある。OEMで手がけるのは主にペットボトル茶であるとみられ、消費構造の変化に対応しながら事業を伸ばしている。

 静岡と鹿児島の製茶会社の業歴平均を比べた場合、静岡が67年であるのに対し鹿児島は50年となっており、それほど大きな違いはない。しかし、静岡には江戸時代前半に創業した製茶会社があるが、鹿児島の場合は今回のデータによると明治期創業の会社が最古参であり、製茶業の歴史やその厚みには違いがありそうだ。「歴史の違いが知名度やブランド力の違いとなり、社数や効率化の度合いの違いにつながっているかもしれない」(山本准教授)

 歴史という点でいえば、製茶会社数で2位の京都は静岡をさらに上回り、業歴の平均は104年。老舗が多く、なかには室町時代~戦国時代に創業の製茶会社もある。南部の宇治などの産地を持つ京都は、荒茶に比べると価格が高い抹茶の扱いが多い。その分、効率的な経営ができており、社員1人当たりの売上高、利益はともに静岡、鹿児島を上回る。