コロナ禍で子どもたちの「受験」が犠牲に

キッズドアは学習支援を続けていますが、教育への影響は?

渡辺氏:深刻な問題が起きています。困窮家庭が直面するのが、受験の壁です。高校生が大学受験ができない、という大変な状況になっています。

 20年10月に、キッズドアと姉妹団体のキッズドア基金が協力して生活困窮家庭(一人親世帯が全体の83%、世帯年収は200万円以下が58%、200~300万円が24%)の高校3年生284人に5万円、高校2年生270人に3万円の奨学金を支給しました。大学進学をしたいけれど、お金がなくて受験ができないのは切ないので、何とか支援をしたいと思ったのです。今年の2月〜3月にかけて、お金の使い道などのアンケートをとったのですが、回答があった高校3年生119人のうち、4分の1が受験料に使ったと回答しました。次いで、参考書代や入学金に使ったという回答が多くなっていました。

5万円がなかったら受験できなかったお子さんもいらしたわけですね。

渡辺氏: はい私たちも驚きましたが、5万円もらったから何とか進学できたと聞くと、本当によかったなと思います。大学入学共通テストの受験料にしても、1万8000円ほどかかります。それが払えないご家庭も多いのです。

さらに私立の場合、受験料が1校3万円を超えますからね。

渡辺氏:調査に答えた119人中7割が大学受験で1校しか受けていませんでした。約半数は指定校推薦でした。本当は大学入学共通テストを受けたかったけれど受験料もないし、チャレンジできないから、確実に入るために本意ではない指定校推薦に進学していく子どもがたくさんいたのです。本当は国立を狙いたかったけど、チャレンジはできないから確実に行ける指定校推薦で進学するということです。「コロナの影響で親の収入は下がるし、自分もバイトもできない。だから本当は行きたかった学校をあきらめた。」という子どもの声も、たくさん届きました。

かわいそうですし、能力を発揮できないなら、もったいないです。

渡辺氏:優秀な子どもたちがチャンスを逃してしまいます。せめて国が実施する共通テストの受験料を無償化していただけたらと思います。

 コロナ禍で、大学受験をあきらめた子どももいます。日本は、少子高齢化ですから、仮に大学進学率が変わらなくても、大学進学者数は減ります。一方、国の競争力を見たときには、どれだけ優秀な人がいるかということが大事だと思いますが、日本はもともと子どもが少ないのに、コロナ禍で大学進学を諦めるというのは、本当に大きな損失だと思います。

世界各国はデジタルや医療の分野など人材育成に力を入れ、大学院進学率を高めるなど国を挙げて取り組むところも増えています。

渡辺氏:そうです。日本はかつてアジア域内では、大学進学率や初任給でもトップでしたが、その地位も危うくなっています。

 日本は子どもの数が減っているのですから、いかにサポートするかが重要だと思うのですが、優秀な子どもたちが、ただ数万円のお金がなくて大学進学をあきらめるような事態を放置しています。こんな国は、ほかにはないでしょう。

 昨年の受験サポート奨学金を受けた高校生のうち14%は浪人すると回答しています。しかし、予備校にも塾にも行けません。「今の受験は、課金と情報戦」と例えた子がいましたが、お金も情報もない中で大学受験を目指すこの子たちが一番不安だと思います。

最近は文部科学省が大学の入学者数を厳格化した影響もあって、合格が難しくなったと言われますね。

渡辺氏:この学部のこの学科はこの科目で受けた方がいいとか、君だったら、ここはこの科目で受ければ合格できる、みたいなことを、予備校に行っている子はちゃんとコンサルティングしてもらっている。予備校に行かない子は、その情報がないため、学校では順位が上の子でも、大学受験では合格できず悔しい思いをしています。

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