だが日本企業は、ビジネスのやり方を変えることに抵抗してきた。日々の慣れ親しんだオペレーションを変えたくないあまり、保守的になっている。組織としての価値創造の方法、キャッシュの稼ぎ方、回し方、そして組織を前に進める方法を、熟考してつくり上げてきたからだろう。

 確かにこれまではうまくいったやり方だ。頑健な仕組みで、リスク管理も適切にやってこられた。だから、世界中の人々が技術革新の波に乗る中、世界と距離を置いてきたのだろう。

 だから、安定性とカイゼンにやや関心が偏っていた上、例えばカイゼンのために安定性を犠牲にするということすらなかった。それ自体は素晴らしいことだ。だが問題は、安全性は必ずしも進歩を保証するものではないということだ。

 これが論争を巻き起こしている点だ。確実に安全だと思っていたのに、世界があまりに急速に変化し、かえって安全ではなくなったのだから。

DX企業への転換に向け新会社を設立した富士通

 だがそんな中でも素早い動きを見せた日本企業はある。富士通はデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業「リッジラインズ」(東京・千代田)を立ち上げ、DXをグループ内で確立しただけでなく、クライアントのDX推進支援にも携わっている。またセブン&アイ・ホールディングスは、オペレーションの変革に素早く10億ドル以上を投資している。

DX企業転換へと変革を進める富士通(写真:アフロ)
DX企業転換へと変革を進める富士通(写真:アフロ)

 一番大きな障壁は、組織の価値観と人材だ。我々の「不死鳥」講義でも、価値観の変革を「ナッジ」(そっと促す)するため、危機に襲われた経営の鉄火場を想定して、成功体験の罠(わな)を打ち破る体験をしてもらう。似たやり方がうまくいく保証はないが、もう一度市場に挑むための備えはできるだろう。

ビジネスモデル、バリューチェーン、すべて再考を

 古いタイプの組織は、本質的にすべてのバリューチェーンやビジネスモデルを再考する必要があり、テクノロジーとビジネスモデルをいかにして結びつけるかを理解し、価値創造と価値獲得につなげなければいけない。今後、日本企業に必要なことだが、追いつくのはおそらくかなり難しいだろう。

 以前は自分たちで創造し、オペレーションをカイゼンすることで高い効率を実現することが有利に働いた。だが、ゲームのルールが根本的に変わったため、その有利な点はゆっくりと消え去りつつある。古いルールで全員が戦っている間、カイゼンは有利だった。しかし、ルールが劇的に変わったら、日本企業は、意識を変えない限り、苦境に陥ることになる。

 大きく「ゲーム」を変えたと評価できる事例を見つけたわけではない。公平にいって、欧州でもそうした例はない。だがマインドセットの変化は、中国やインドには見られるし、東南アジアや米国にも事例が見られる。だからこの点は、途上国だけの問題ではない。例えば米国は極めて成熟した市場だが、大きな変革の事例がある。

変化が目に見えるまでに、何年かかりますか。

ハシジャ氏:今の時代、この2~3年で何も変わっていないのであれば既に遅い。2年も3年もかけて考えた戦略は、とっくに古くなっている。現在の変化は、一度きりの変化ではない。これからも変わり続ける。

 よく知られているトヨタの哲学について、今一度考えてみてほしい。カイゼンは素晴らしいが、もはや、それは継続的な変革を意味する言葉に入れ替えるべきだ。それこそが、次につながるからだ。

 継続的な改善ではもうダメだ。継続的な「変革」が必要なのだ。

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