文系社員もアプリを自作

実際にどんな企業が研修を実施していますか?

小森氏:三菱ケミカル以外では例えばNECでは、新入社員144人が参加して6日間の研修を実施しています。ほかには伊藤忠テクノソリューションズや医薬、広告などの会社も。

NECはテック系企業という認識なのですが。

小森氏:テック系企業でも、同様の悩みは存在します。事前のヒアリングでは、管理や営業といったビジネスサイドの社員たちと技術を担当するエンジニアサイドの社員たちとがコミュニケ―ションを深めていくためにも、デジタルの思考法を共有して、分断などが起こらないようにしたいという声がありました。

具体的な研修の中身は?

小森氏:例えばデジタルマインドを育てるベーシックな講座でも、座学とともにアプリ制作に挑戦します。とはいえ、目的はアプリを作ることではなく、デジタルのフレームという思考方法を全て伝えて、最後にアウトプットとしてアプリを完成させるという形です。

 今ある課題と理想との差分から、課題を設定してフレームで考えるのです。またフレームワークと並んで、もう一つ重要なのが、フローチャートです。エンジニアが基本的に物事を可視化したり、要件を定義したりするときに使うものです。

 例えば、コーヒーを買うときは、お店に行く→メニューを選ぶ→注文する→注文を受ける→担当者がコーヒーを用意する→客がコーヒーを受け取るという流れがあります。この中に問題があるか探るために、→に沿った流れに着目します。

 例えばお店に行く場合に道に迷ってしまうとか、あとはコーヒーの待ち時間が長いとか、流れがスムーズではないところには問題が潜んでいます。

 フローチャートを描いて現状を可視化し、隠れた問題を言語化し明らかにしていきます。

 例えば、ある作業は属人的に処理するために人が替わると業務が滞りやすい、だから改善点すべきだなど、たくさんの示唆が生まれます。

 研修プログラムには、そうしたデジタル的なものの見方、考え方も埋め込んでいます。

 アプリ作りには、ノーコードツールを使っています。いわゆるプログラミングをしてアプリを作ると結構な時間がかかるので、プログラムを書く手間を省いていますが、思考方法は徹底的に言語化します。1回だけだと足りないので、6日間の研修では4回ほど作業を回し、1人が4つのアプリを作りました。

NECの研修で使った農業体験の事例。農業体験プログラムへの参加を申し込むアプリを制作した(写真提供/ライフイズテック)
NECの研修で使った農業体験の事例。農業体験プログラムへの参加を申し込むアプリを制作した(写真提供/ライフイズテック)
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JAFCOの研修には様々な世代の社員が参加した(写真提供/ライフイズテック)
JAFCOの研修には様々な世代の社員が参加した(写真提供/ライフイズテック)

思考しながら、アプリを作り、手を動かすのですね。

小森氏:こうした手法は具体物操作と言って、教育の中でもすごく大事なメソッドです。例えば小学生が足し算を学ぶときに、「3+5=8」という記号を理解するのは難しいのですが、「リンゴは3つです、ミカンは5つです、足したら何個でしょう」「8個だ」と、手で操作をしながら理解して、抽象的な概念に落とすのはやさしい。この流れです。

 デジタルも全く一緒だと思うので、プログラムはアプリを作るところからスタートします。

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