あらゆる活動を抑止しようとすれば社会・経済に深刻なダメージ

五輪競技場に観客を入れるか否かの議論が開幕直前になっても続きました。この議論について、どういったご意見をお持ちですか。

仲田氏:リスクを最小化するということだけを目的とするならば、すべての社会・経済活動を止めればいいわけです。無観客が有観客よりも感染拡大リスクが低いのは当たり前ですし、中止が開催よりも感染拡大リスクが低いことも当たり前です。しかし、感染リスクを最小化することだけを考えて生きている人はあまりいないのではないでしょうか。

 東京では毎日、何百万人が混んだ電車に乗って通勤通学しているし、緊急事態宣言中も音楽・スポーツイベントにある程度の観客を入れることを許容してきました。多くの人々は感染リスクを抑えつつ、いかに普通の生活を営めるかを模索しているのだと想像します。

 もちろん、新規感染者数、重症患者数ゼロを目指すという考え方をする人々もいるでしょう。多様な考え方が存在することは当然です。しかし、あらゆる活動をすべて抑止しようとすれば社会・経済は深刻なダメージを受けて、失業者・自殺者が増加します。

 私たちが現在行っている分析によると、コロナ危機の影響で増加した自殺者数はこれまで3000人以上であり、今後2~3年でその数はさらに増加します。色々な考え方があるなかで、どの考え方が正しい・間違っているという議論をするのではなく、定量的な分析に基づいてどういった政策がより多くの人々に受け入れられるのかを模索することが建設的だと思います。

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感染拡大を抑えながら社会・経済活動をどう継続するか。そのバランスが重要ということですね。

仲田氏:一般論として、感染者数をかなり下げきって経済活動を再開すれば、将来の再度の緊急事態宣言を回避できる可能性が高くなります。緊急事態宣言中にできるだけ感染者数を減らしてから経済活動を再開した方が、最終的に死亡者数を減らせるし、中長期的な視点からは経済損失も少なく抑えることも可能です。中途半端にしか新規感染者が減っていない段階で経済活動を再開すると、緊急事態宣言を再度出さなければならなくなります。宣言解除・発令を頻繁に繰り返すことには経済的なコストが伴います。

現状はどうでしょうか。感染状況は第5波に入った、とも言われています。

仲田氏:毎週更新している新規感染者数と経済の見通しでは、インド型(デルタ型)の影響もあって東京都の新規感染者数は拡大しています。ワクチン接種がある程度進んでいるという安心感が逆効果になっているのかもしれません。

 6月22日に緊急事態宣言を解除しましたが、その時点で新規感染者数がしっかりと下がりきらなかったことも現在の感染拡大の一因です。100~200人程度まで下がれば解除後にある程度時間が稼げるのですが、400人程度まで下がると、緊急事態宣言の効果が薄まりそれ以上下がらないという状況が繰り返されています。

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