環境問題をマルクス主義の視点から読み解いた『人新世の「資本論」』が30万部超のベストセラーとなっている。専門性が高い内容にもかかわらず読まれる理由を著者の大阪市立大学の斎藤幸平准教授に聞いた。

斎藤 幸平氏
1987年生まれ。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。「Karl Marx’s Ecosocialism」でドイッチャー記念賞を日本人初、歴代最年少で受賞。『人新世の「資本論」』は32万部を超え「新書大賞2021」第1位にも選ばれた(写真:宮田昌彦、以下同)

タイトルにある「人新世(ひとしんせい)」はあまり聞き慣れない言葉です。

斎藤幸平氏(以下、斎藤氏):人新世はオランダの科学者、パウル・クルッツェンが21世紀に入ってから提唱した地質学の新しい時代区分だ。

 歴史的には白亜紀、ジュラ紀といった地層時代があり、現在は258万年前に始まった新生代第四紀の完新世が1万年ほど続いているとされてきた。しかし、地球環境は一変した。ビルが乱立し道路や農地、ダムやゴミ捨て場など手つかずの自然は存在しなくなっている。大気には二酸化炭素、海にはマイクロプラスチックだ。つまり、地球の表面全体を資本主義が作り出したものが覆うようになっているのだ。これはもはや今までの地層とは違い人類が生み出した地層になっている。そこでクルッツェンは完新世が終わりを告げて人新世という時代に突入したのではないかと提案したが、その背景には、資本主義が地球にダメージを与えているかという環境危機への鋭い問題意識がある。

 地層は通常、人間から独立して形成されてきたものだが、それさえも人間の経済活動が変えるようになった。それほどまでに資本主義が地球環境にもたらす負荷は大きい。では人間が自然を操れるようになったかといえば、まったく逆だ。異常気象による水害や山火事など、自然の脅威に襲われるようになり、私たちの生活が根本から揺るがされる逆説的な事態が起きている。その人新世に象徴的な危機が気候変動だ。

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