その案に対してのLGBTコミュニティーの反応はどうだったのですか?

松中氏:現実に、学校・職場・地域社会でのLGBTに対する差別的言動は多くあります。また、毎日の生活での差別的な取り扱いにより社会保障や相続などの点で不利益が生じています。法律で「差別禁止」と定めれば、差別に当たる状況を改善しなければなりませんが、「理解増進」だと、まずは、LGBTの状況を理解しましょう、でとどまってしまうわけです。結果的にLGBTへの理解も差別解消も遅れてしまうおそれがあります。

 例えば、現在、自治体によっては戸籍上、同性同士のカップルの関係を認めるパートナーシップ制度を導入しているところがありますが、自民党の保守派の方が強い地域では、パートナーシップ制度の導入を求めると、「今、LGBTの理解増進法の制定に取り組んでいるから、それが成立するのを待ってから」と対応が遅れるケースも起きているのです。こういう議論では、状況はむしろ後退してしまいます。

では、改めて「差別禁止法案」を求めたのですか?

松中氏:野党議員からも、「この案で法律をつくることを優先してはどうか」と言われましたが、「差別禁止を盛り込んでいない案はのめない」と伝えました。すると自民党側から、法律の基本理念に「差別はゆるされないものという認識の下」という言葉を盛り込む案が出されました。基本理念にその言葉が入れば、少なくともすべての条文に、基本理念が反映されるので、その変更に賛成しました。

 しかし、その後、自民党の内閣第一部会で、差別的発言があり、さらに総務会で「差別」という文言をめぐって議論があり、時間がないので提出しないという話になり、LGBT法連合会やプライドハウス東京などが連帯して自民党本部前でLGBT差別への謝罪と法案成立を求め抗議するために24時間のシットイン(座り込み)活動を敢行したのです。最終的には26時間、現地には550人、オンラインでは3000人以上が参加しました。

(写真提供=LGBT緊急デモ24時間シットインの会)
(写真提供=LGBT緊急デモ24時間シットインの会)

現実として、差別はあるわけですからね。

松中氏:LGBTに対する差別を受けて苦しむ人は多く、LGBTは自殺リスクが高いのです。ある調査では、自殺未遂の割合がセクシュアル・マイノリティでない人に比べてLGBは6倍、トランスジェンダーは10倍という結果が出ています。LGBTコミュニティーは、友人や知人を自殺で失った経験を持つ人も非常に多いのです。内閣府による自殺総合対策大綱ではハイリスク層として位置付けられています。

(写真=北山宏一)
(写真=北山宏一)

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