世界でLGBT(性的少数者)に対する差別禁止の法整備が進む中、日本ではLGBT理解増進法案(性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案、以下、LGBT法案)が暗礁に乗り上げている。国内84のLGBT団体が加盟するLGBT法連合会などの後押しを受け、超党派の議員が法制化に取り組んできたが、自民党内の会議で反対意見が出て、国会への提出が止まっている状態だ。

法制化をめぐっては、「差別禁止」を法案に明記することを望むLGBTコミュニティーと、あくまで「理解増進」にとどめ「差別禁止」に踏み込みたくない保守派議員との間で考え方の食い違いも起きていた。日本ではなぜLGBTの人権を守る法制化が進まないのか。

経済界でも近年、LGBTへの理解を促す取り組みが進んでおり、LGBT法案への行方が注目されている。パナソニックは4日、LGBT平等法制定を目指す署名への賛同を発表し、新経済連盟もすでにLGBT法案の推進を求める声明を発表。IOC(国際オリンピック委員会)も LGBTへの差別撤廃の必要性を改めて強調している。

LGBT団体の代表を務め、法制化に向けた活動を推進するメンバーの1人である松中権氏に聞いた。

まず、LGBT法案が作られながらも自民党の反対で国会に提出されていない、これまでの経緯をどう見ますか?

松中権氏(以下、松中氏):正直言って、自民党には裏切られた思いです。世界ではEU(欧州連合)や米国(州によって異なる)、オーストラリアなど80を超える国が差別禁止法を定めています。差別が許されないのは当然のことですが、その言葉を法案に盛り込むことに反対する議員がいる。また今回、自民党の議論の中で、LGBTに対して「種の保存に反する」といった発言やトランスジェンダー女性のアスリートを侮辱する発言がありましたが、そのことに対する謝罪がないことも非常に残念です。

<span class="fontBold">松中権(まつなか・ごん)氏</span><br />プライドハウス東京代表 / 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ代表。 石川県生まれ。電通に勤務する傍ら、2010年、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティーが安心して暮らせる社会づくりを目指し、グッド・エイジング・エールズを設立。LGBTQが働きやすい職場を評価する「PRIDE指標」を発表するなど、LGBTQへの理解を深める活動を展開する。母校である一橋大学に通うゲイの学生の自殺を機に、2017年会社を退職し活動に専念。LGBTに関する法制度を求める「なくそう!SOGIハラ」実行委員会代表、2018年からは、東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、LGBTQに関する情報発信を行うプライドハウス東京の代表も務める。 (写真=北山宏一)
松中権(まつなか・ごん)氏
プライドハウス東京代表 / 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ代表。 石川県生まれ。電通に勤務する傍ら、2010年、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティーが安心して暮らせる社会づくりを目指し、グッド・エイジング・エールズを設立。LGBTQが働きやすい職場を評価する「PRIDE指標」を発表するなど、LGBTQへの理解を深める活動を展開する。母校である一橋大学に通うゲイの学生の自殺を機に、2017年会社を退職し活動に専念。LGBTに関する法制度を求める「なくそう!SOGIハラ」実行委員会代表、2018年からは、東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、LGBTQに関する情報発信を行うプライドハウス東京の代表も務める。 (写真=北山宏一)

二度と悲劇を起こさないために差別禁止の法制度を

そもそも、LGBTへの差別を禁止する法制化の動きがスタートした背景には何があったのでしょうか。

松中氏:2015年一橋大学の法科大学院に通う学生が、同性愛者であることを本人の意思に反してアウティングされ(明らかにされ)自殺し、翌年遺族が提訴する事件が起こりました。それを受けてこんなことが二度とあってはならないとLGBTコミュニティーが衆参両院の国会議員に訴えたのです。2017年以降、レインボー国会と名付けてLGBTに対する差別禁止を求める活動を続け、超党派の議員による法案の議論も重ねられてきました。

 野党、さらに与党公明党は差別禁止を含む法案を推してくれました。一方、自民党は特命委員会をつくって議論し、差別禁止という明確な言葉を含まない理解増進法案を出してきました。

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