
中国の街に活気が戻ってきた。朝夕のラッシュアワーでは大渋滞が起こり、人気レストランには大行列ができている。万里の長城や天安門広場などの観光地は旅行客であふれ返り、街中でも団体観光客を乗せた大型バスをよく見かけるようになった。地方出身の学生たちや出張者らに話を聞いても、どこの都市でも「完全に新型コロナウイルス禍前に戻った」と声をそろえる。
2022年12月7日、コロナ対策に関する大幅な緩和措置を発表し、いわゆる「ゼロコロナ政策」は事実上の終焉(しゅうえん)を迎えた。ゼロコロナ政策の下では、政策の予見性が極めて低く、地域を跨(また)いだ活動が行いにくかったが、これらの不確実性が完全に取り除かれた。私も、3月末に上海で開催されたセミナーに参加したが、約4年ぶりに乗った国内線はほぼ満席の状態だった。
ゼロコロナ政策で最も影響を受けてきたのがGDP(国内総生産)の約4割を占める個人消費だ。人やモノの移動が制限され、消費は急速に収縮した。実際に、国家統計局が公表している社会消費品小売総額は、20年に改革開放以来初のマイナス成長となり、22年も前年比0.2%減だった。特に、外食や旅行、レジャーなどのサービス業の落ち込みが大きかった。
その消費が急回復している。中国の23年1~2月の社会消費品小売総額は前年同期比3.5%増となり、昨年9月以来のプラスとなった。内訳をみると、22年通年で6.3%減だった飲食収入は、9.2%の大幅増となった。外出が減ったことで買い控えられていた服飾・繊維製品・靴など(同6.5%減)と化粧品(同4.5%減)は、それぞれ5.4%増と3.8%増まで回復した。
比較的良好な出だしとなった消費だが、回復基調は今後も続いていくのであろうか。
積み上がる超過貯蓄
今年の消費動向を占う上で注目されているのが「超過貯蓄(強制貯蓄)」だ。22年のゼロコロナ政策や不動産市況の悪化などの影響で非自発的に蓄積した貯蓄を指し、多数の中国国内のエコノミストたちも独自に推計を行いリポートを公表している。
まずファクトとして指摘できるのは、22年における家計部門の預金が異常に増えていることである。家計部門における人民元預金は、22年1年間で17.8兆元(約342兆円)増えており、統計が遡れる04年以降で最高となっている(図表1)。21年よりも7.9兆元多い。このうち非自発的にたまった超過貯蓄の具体的な金額は、推計手法の違いによってエコノミストごとに幅が見られるが、概して6兆~8兆元程度に達すると報告されている。
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