
中国の新型コロナウイルス感染症対策が大転換を迎えた。
中国政府は2022年12月7日、コロナ対策に関する大幅な緩和措置を発表した。今回の緩和で特に大きいのは、これまでいかなる感染者に対しても強要していた施設での隔離を廃止し、無症状感染者や軽症者の自宅での隔離を認めた点。である。また、高齢者施設や医療機関、学校など限られた一部の施設以外では、PCR検査の陰性証明書や健康コードの確認を求めないとした。さらに23年1月8日からは入国時の隔離義務も撤廃した。
この方針転換により、徹底的な封じ込めにより国内の新型コロナ患者を一人も出さない「ゼロコロナ政策」は事実上の終焉(しゅうえん)を迎えた。
突然の政策変更を境に、私が住む北京市では感染爆発の様相を呈した。PCR検査場の多くが既に撤去され、全市民検査を行っていないので正確な感染者数は不明だが、友人や学生に話を聞いた感じでは、若者に限って言えば、5人に4人は感染したようだ。無症状を考えると、ほぼ100%に近いのかもしれない。
ご多分に漏れず私も感染してしまった。40度の高熱、激しい頭痛と喉の痛みに悩まされた。病院に行くことも考えたが、発熱外来で長蛇の列ができている映像がSNS(交流サイト)で出回っていたので思いとどまった。
なぜこのようなことになってしまったのか。
「健康コード」の不透明な運用管理に不満
そもそも、多くの中国人が「ゼロコロナ政策」を支持していた。世界の多くの国で感染者が急拡大する中、安心して暮らせる社会を実現したことが背景にある。運悪く居住地で新規感染者が確認され自由を奪われた住民からも、一定期間を我慢すれば日常生活を取り戻せるため、不満の声はほとんど聞かれなかった。
私が「潮目が変わった」と感じたのが、上海の都市封鎖(ロックダウン)や北京での厳しい防疫措置が実施された22年4月以降だ。PCR検査が常態化し、行動制限がより強化されたことで、市民から不満の声がよく聞かれるようになった。
北京で運用されているコロナ対策アプリ「健康コード」に、「弾窓(ポップアップメッセージ)」という機能が付いたのが4月の規制強化以降だった。例えば、一定期間PCR検査を受けないと、アプリ上に「弾窓」が出現し、各種公共交通機関の利用や商業施設への入場ができなくなる。
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