(写真=新華社/アフロ)
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 2022年10月16日から22日までの1週間、中国の首都北京で中国共産党の第20回党大会(二十大)が開催された。共産党が国家を指導すると憲法で定められている中国において、5年に1度開催される党大会は、今後の政策方針や最高指導部人事などを決定する最重要会議である。

 初日の開幕式では習近平(シー・ジンピン)総書記による報告演説が行われた。今回の演説時間は約1時間45分と、第19回党大会(十九大)の約半分の長さだった。新型コロナウイルス禍以降は会議時間そのものが短縮されており、その中においては比較的長い方だったと言える。

 党大会報告の一言一句は重い。どのような言葉が使われたのか、言及した順序はどうだったのか、何に触れ何に触れなかったのか。今後はこの報告の内容に関する勉強会が至る所で開催され、具体的な政策へと反映されていく。

 今回の報告で新たに出てきたワードが「中国式現代化」だ。習総書記は、中国式現代化の一つとして「全人民の共同富裕を目指す現代化」と説明した。また、「中国式現代化の本質的な要請」でも、「高質量発展(質の高い発展)」および「共同富裕(共に豊かになる)」の実現が示された。

 本稿では、この高質量発展、共同富裕に着目し、今後5年間で進められていく中国式の「成長」と「分配」について考察する。

高質量発展が1丁目1番地

 中国には依然として多くの社会問題が山積しており、足元では不動産依存の地方財政、若年層の失業など新たなリスクも顕在化している。今後は人口減少に伴う少子高齢化社会の到来も見込まれており、いずれも経済成長が滞れば解決が難しい問題ばかりだ。共同富裕の実現には、パイの拡大が大前提となる。

 習総書記は経済に関する報告の冒頭で「質の高い発展は社会主義現代化国家の全面的建設の最重要任務である」と述べ、「首要任務(最重要任務)」との強い言葉で経済発展重視の姿勢を示した。

 「首要任務(最重要任務)」とは、十九大報告では共産党に関する項目の1丁目1番地である「党の政治建設を首位に置く」の部分で用いられた言葉だ。実際に、過去5年間を振り返ってみると、現場レベルの党内教育が強化され、十九大報告で「首要任務」とした共産党の「政治建設」や「思想建設」に関する取り組みはかなり進んだ。

 二十大報告に対する評価として、中国国内では経済を重視する姿勢が示されたとの声も聞かれる。例えば、清華大学の李稲葵・中国経済思想実践研究院長は「今後5年間、中国の指導者は経済問題にエネルギーの大半を費やし、政策の焦点は経済に戻る」と述べている(『日本経済新聞』22年10月31日付朝刊)。

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