ライトアップされた亮馬河には多くの人が集う
ライトアップされた亮馬河には多くの人が集う

 北京市の中心部から北東に向かって流れる亮馬河。日本大使館や日本料理屋が集積するエリアも貫く、北京で暮らす日本人にもおなじみの川だ。

 夜になると、この亮馬河沿いに整備された「亮馬河国際風情水岸」には人だかりができる。イルミネーションによって美しくライトアップされた川沿いでは、バーでお酒を楽しむカップル、スケートボードに興じる若者、子供を連れて散歩する家族など、様々な世代の人々が思い思いの時間を過ごす。

 2022年7月15日、「2022北京消費シーズン・夜京城」がこの亮馬河国際風情水岸で開幕した。市内の20以上の重点ビジネス地区と1万近くのテナントが連動し、グルメ、娯楽、ショッピングなど5大テーマのイベントを11月まで実施する。

 この「夜京城(北京ナイトシティ)」とは、19年に北京市が消費喚起を目的に打ち出した夜間経済(ナイトタイムエコノミー)に関わるエリアを指す。

中国でのナイトタイムエコノミー活性化の取り組み

 19年7月、北京市は「ナイトタイムエコノミーの更なる繁栄と消費促進に関する措置」を発表した。インフラ整備やイベントの企画、公共交通機関のサービスの向上など具体的な13カ条の具体的措置を通じ、ナイトタイムエコノミーの発展を加速させ、国際消費中心都市建設の促進を目指すとした。

 北京以外にも、上海や西安、成都、天津、南京などの大都市を中心に、ナイトタイムエコノミーの活性化を通じた消費刺激策が矢継ぎ早に公表されたのもこの時期だ。

 中央政府もナイトタイムエコノミーに期待を寄せる。19年8月、国務院(政府)弁公庁は「流通の発展加速と商業消費の促進に関する意見」と題する消費刺激策を公表した。その第12条に明記されたのが「夜間消費の活性化」だった。「意見」では、営業時間の延長や深夜営業専用エリアなどの開設を推奨し、夜間の消費スポット、交通・環境に対する支援を通じて夜間消費活動の利便性を高め活性化を促すとした。

 政府によるナイトタイムエコノミーの活性化への取り組みは、20年の新型コロナウイルス感染症の大流行で激減したが、ここにきて再び活発になってきた。北京では、金曜日と土曜日および祝祭日に限り八達嶺長城を夜間開放し、ライトアップされた万里の長城を楽しむことができる「夜長城」イベントも始まった。先日出張で訪れた青島でも、海沿いの広場や繁華街のビルもライトアップされ、多くの人が集まっていた。

 背景にあるのが新型コロナ再燃による消費の低迷だ。中国国家統計局によると、第2四半期の社会消費品小売総額(小売売上高)は、前年同期比4.6%マイナスと、第1四半期(1~3月)の3.3%プラスから急激に落ち込んだ。22年上期(1~6月)で見ても、0.7%マイナスとなっている。

 中でも影響が大きかったのが、4月から約2か月間の都市封鎖(ロックダウン)となった上海や5月に防疫対策強化で厳しい行動制限を受けた北京だ。22年上期(1~6月)の社会消費品小売総額を見ると、上海が16.1%マイナス、北京が7.2%マイナスと大きく落ち込んでいる。

 1人当たり国内総生産(GDP)1位の北京と2位の上海の消費低迷が中国経済全体に与えるインパクトは甚大だが、逆を言えば、これらの都市部で消費が回復すれば、中国全体の景気浮揚への貢献度も高い。

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