
新型コロナウイルスの感染拡大で、中国経済が急減速に見舞われている。人やモノの移動が制限され経済活動が急速に収縮したことで、消費や生産などの経済指標は軒並み悪化している。
厳しい行動制限の影響が顕著に表れたのが個人消費だ。中国国家統計局の統計によると、4月の社会消費品小売総額(小売総売上高)は前年同月を11.1%下回った。中でも、自動車販売は同31.6%減と大幅に下落している。
生産面では、サプライチェーン(供給網)の混乱で原材料や部品の調達が滞り、多くの工場が一時的な閉鎖や稼働率の低下に追い込まれた。4月の工業生産は、前年同月比2.9%減と、約2年ぶりにマイナスへと転じた。生産でも自動車の不振が顕著で、中国自動車工業協会によると、生産量は120.5万台と昨年同月を46.1%下回った。
最も影響が大きかったのが、中国屈指の経済都市である上海の都市封鎖(ロックダウン)だ。上海市統計局の公表によると、4月における社会消費品小売総額は前年同月比48.3%減、工業生産も同61.6%減と、中国全体を大きく下回った。同市の4月の新車販売台数はゼロだった。
4月の主要統計では衝撃的な数字が並んだが、5月はさらに悪化する可能性が高い。新型コロナ対策強化により労働節(メーデー)の連休期間(4月30日~5月4日)の観光収入が前年同期比で42.9%減に落ち込んだのに加え、首都・北京でも4月下旬以降、大規模なPCR検査や交通制限措置、商業施設の一時営業停止など、厳しい防疫措置が実施されたからだ。
日課となったPCR検査
北京市民の日課となったのがPCR検査だ。私が住んでいるのは、日本企業も集中している朝陽区。4月25日から一斉検査が始まり、5月に入ってからはほぼ毎日検査を受けた。臨時の検査場が徒歩15分圏内に設置され、街の至る所で防護服を着た検査員を見かける。
PCR検査状況を管理しているのが、自分の健康状態をスマホ上で証明できる「健康コード」だ。地方によって仕様が異なり、北京では「北京健康宝(Health Kit)」と呼ばれている。検査の結果は、数時間後にこの「健康コード」で確認することができる。また、一定期間PCR検査を受けないと、スマホ上に「弾窓(ポップアップメッセージ)」が出現し、解除されるまでどこにも行けなくなってしまう。
5月は日常生活も大きく変わった。連休明けからは原則在宅勤務となり、私が勤務する対外経済貿易大学でも、教職員の構内への立ち入りも原則禁止され、授業や会議は全てオンラインとなっている。公共交通機関の運行も一部停止となり、多い時で合計約90カ所の地下鉄駅が封鎖された。我が家の最寄り駅は、5月29日に運行再開されるまで、テークアウトや出前でしか販売できなくなった。私も全ての会食予定がキャンセルとなり、人と会うことがほとんど無くなった。約20年北京に住んでいるが、一か月以上も外食しなかったのは初めてだ。飲食店以外にも、スーパーや薬局などの生活必需品を除く多くの小売業やサービス業が営業を禁じられた。我が家の家計支出も半分以下に激減した。
1人当たりGDP(域内総生産)1位の北京と2位の上海の経済活動縮小が中国経済全体に与えるインパクトは甚大だ。第2四半期(2022年4~6月)の経済成長減速は避けられそうにない。
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