「共同富裕」を推進する習近平氏。農村視察では貧困の改善状況なども確認する(写真=新華社/アフロ)
「共同富裕」を推進する習近平氏。農村視察では貧困の改善状況なども確認する(写真=新華社/アフロ)

デジタルチャリティーでユーザー囲い込み

 チャリティーそのものは無償だが、自社サービスへのユーザー囲い込みのツールとして利用されている。

 アリペイ最大のライバルは騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャットペイ)」だが、ユーザーはどちらで決済してもサービスそのものに大差はない。アントは、デジタルチャリティーを使って、自社の決済サービスの利用を増やそうと試みている。アリペイを使って店舗で決済したりオンラインで送金したりするとポイントがもらえるため、友人からは「どちらを使っても同じならポイントをもらえるアリペイを使う」との声を聞いたこともある。

 アリペイがウィーチャットペイに大きく後れをとるのが、ユーザー同士の「つながり」である。ウィーチャットペイがコミュニケーションツールであるチャットアプリがベースとなっているのに対し、アリペイの出発点はEC(電子商取引)。アリペイ上で「友だち」としてつながるケースの方がまれだ。実際私の「友だち」の数を見てみると、ウィーチャットでは1442人とつながっているのに対し、アリペイはわずか13人にすぎない。

 この現状を解消しようと、様々な仕掛けが随所に盛り込まれている。「芭芭農場」では、友だちと一緒に果樹を育てることができるし、「螞蟻新村」では、友だちの村に屋台を設置してポイントを稼ぐことができる。友だちをチャリティーに誘うとポイントがもらえるキャンペーンもある。

 ユーザーをグループ企業のサービスへと誘導する仕掛けも施されている。代表的な例が、アリババのECサイト「淘宝網(タオバオ)」での売り上げにつなげる戦略だ。例えば、「芭芭農場」では、タオバオを15秒閲覧するとポイントがもらえる。実際にアクセスすると、過去履歴をベースとしたおすすめ商品がずらりと並ぶ。さらに、購入時に大量の追加ポイントを付与することで、ユーザーの背中を後押しする。

 また、グループ企業が新たなアプリをリリースしたときなど、新規ユーザーの獲得にも利用されている。

 アントはこれまで、アリペイ上で様々な金融サービスを提供することでユーザー囲い込みを行ってきた。しかし、2020年以降のフィンテック規制強化を受け、成長鈍化に直面している。

※ 金融サービスを利用したユーザー囲い込みの実態は「中国モバイル事情 決済を制する者が市場を制す」を参照。

 国が提唱する「共同富裕」をしたたかに利用するなど、新たな成長に向けた暗中模索は続いている。

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