
2021年12月、中国東北地域の黒龍江省に位置する鶴崗市が、財政再建計画の実施を理由に職員募集を中止すると突如公表した。
実はこの鶴崗市は数年前、マンション一部屋の価格が数万元(数十万円)にまで下落し、「白菜価格」だとネット上で話題になったことがある。
不動産価格下落の要因の一つとして考えられるのが、人口減少に伴う不動産需要の蒸発だ。同市は中国有数の炭鉱地域として発展してきたが、2011年に「全国資源枯渇型都市」に指定され経済不振が慢性化。2020年人口センサスによると、前回調査の10年前から16.7万人(15.8%)減少し、89.1万人となった。
過疎が進む地方都市で何が起こっているのか。詳しく見ていくと、不動産と財政再建計画との深い関わりが見えてきた。
財政再建計画発動の要因
地方政府の財政再建計画発動の条件は、中国政府が2016年に公表した「地方政府性債務リスク緊急対応プラン」に明記されている。具体的には、市県政府の一般債務または専項債務(特別債務)の利払い支出が当該年度の一般公共予算支出または政府性基金予算支出の10%を超えた場合、財政再建計画を発動させなければならない、と規定されている。
つまり、日本の一般会計にあたる「一般公共予算」と、特別会計のような「政府性基金予算」のどちらかに問題が生じた場合、財政再建計画が発動されることとなる。
今回の鶴崗市のケースはどうか。
中国メディアの報道によると、一般債務の利払い支出の比率は10%を超えておらず、財政再建計画発動の主な要因は政府性基金収入が大幅に減少し、専項債務の利払い支出が10%を超えたためだとみられる。実際、2021年における鶴崗市の政府性基金収入は2020年対比で71%減少しているとの報道もある。
この政府性基金の多くが、国有地使用権の譲渡による収入だ。中国財政部の統計によると、2020年の中央、地方を合わせた全国政府性基金の87.9%が土地譲渡による収入だった。
もともと不動産需要が低迷していた鶴崗市だが、2021年は不動産市況の悪化が追い打ちをかけた。大中100都市の国有土地成約金額を見ると、恒大集団問題が顕在化した下半期から急激に減少し、7月以降は前年比マイナス圏で推移している(図1)。結果として、通年では前年比12.8%減となる4.62兆元(約84兆円)まで落ち込んだ。
以上から、鶴崗市の財政再建計画発動の主因は、専項債務の利払い支出金額(分子)は変わらない一方で、土地譲渡収入の減少に伴い政府性基金予算支出(分母)が減少した結果、その比率が、政府が規定する10%を超えてしまったことにあると考えられる。
財政再建計画が発動された地方政府は、財政収入強化や資産処分実施のほか、必要な民生支出や政府運営支出を除き、財政支出の削減などが求められる。この状況が長く続けば、行政サービスの質の低下がさらなる人口流出を招くという悪循環に陥る可能性も否定できない。
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