世界に先駆け「黎明期」を迎えるスマートカー

 2021年に公表された『第14次五カ年計画』(21~25年)において、「製造強国戦略」が示された。目指すのは製造業の核心的競争力向上。その「核心」分野の一つが「スマートカー」だ。

 自動運転分野においては、民間企業を中心に研究開発が進められてきたが、社会実装に向けた動きが活発化してきている。例えば、自動運転システム「Apollo(アポロ)」を開発している百度(バイドゥ)は、浙江省の自動車メーカー吉利汽車と合弁企業を設立した。社名は「集度汽車」。Apolloの自動運転技術やAI技術に加え、地図検索サービス「百度地図」や車載用基本ソフト(OS)「小度車載」などのソフトウエア技術を生かしてスマートカーの開発に取り組んでいる。同社のコンセプトカーは2022年4月開催の北京モーターショーでのお披露目が予定されている。

 この分野には、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)以外にも、華為技術(ファーウェイ)や小米(シャオミ)など多くのテクノロジー企業が参入し、激烈な開発競争が繰り広げられている。

 民間の開発が進む一方で、政府によるガイドラインの策定や規制緩和の動きも始まっている。例えば北京市は2020年9月、「ハイレベル自動運転モデル地区」の建設を発表した。現行法下では自動運転は様々な制約を受けるが、同エリア内に限り規制を緩和する。また、2021年4月にはさらに一歩進んだ「スマートコネクテッドカー政策先行エリア」が公表され、タクシーやバスなどの公共交通や物流において、自動運転車を使った有料の商用サービスを奨励する方針が示された。この方針を受けて、百度は同年11月から北京市内の公道の一部で、有料の自動運転タクシーサービスを始めている。

 現在は一部の限られた地域でのみ許可されている自動運転だが、将来的に都市部全域で導入できるほどにまで技術力が高まれば、世界的な競争力を持つようになるだろう。

 北京で生活した経験がある方なら分かると思うが、交通環境は決して良くない。運転手の交通マナーも悪く、信号無視や割り込み運転もよく見かける。路上駐車も多く、車の陰から歩行者が飛び出してくる。これに加え近年では、「外売(ワイマイ)」と呼ばれるデリバリーサービスの配達員たちが運転する電動バイクが縦横無尽に走り回っている。交通違反や無謀運転も多く、死傷事故が社会問題となっているほどだ。

 もしこのような過酷な状況でも自動運転を可能にする高度な技術があれば、日本のような交通秩序が比較的しっかりした環境だと比較的容易に適応できるし、交通事情が厳しい新興国にも受け入れられるのではないだろうか。

 新エネ車が「成長期」へと突入しつつある中で、「黎明期」を迎えようとしている中国のスマートカー。世界に先駆けた国内市場の確立、そしてその遠く先にある世界市場を目指して、官民挙げた研究開発、社会実装が進められている。

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