駐車場に設置された異なるメーカーのEV専用充電器。奥には「代歩車」も見える。
駐車場に設置された異なるメーカーのEV専用充電器。奥には「代歩車」も見える。

 中国の新エネルギー車(新エネ車)販売が加速している。中国汽車工業協会が1月12日に発表したデータによると、2021年の新エネ車の新車販売台数は前年比2.6倍となる352.1万に達し、初めて300万台を突破した。

 新車全体の販売台数は2627.5万台。前年比3.8%増と4年ぶりに前年実績を上回ったが、新エネ車を除くガソリン車などの販売台数は前年比5%のマイナスだった。

 原動力となっているのが、新エネ車販売の8割強を占める電気自動車(EV)だ。中国では、EVに加え、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料自動車(FCV)が新エネ車と定義され、ハイブリッド車(HV)は含まれない。

 EV需要増の要因の一つとして、幅広い価格帯の車両が投入され、消費者の選択肢が広がったことが挙げられる。米テスラなどの中高価格帯EVに加え、国産メーカーの低価格帯EVが市場に相次いで登場している。2020年に販売を開始し、2万8800元(約52万円)という低価格を武器に地方都市を中心に爆発的に販売を伸ばした、上汽通用五菱汽車の「宏光MINI EV」は日本でも話題となった。

 実際に、私の住む「小区(団地)」でも、最近EVをよく見かけるようになった。その種類も、外資メーカーBMWのSUVタイプから、国産メーカー長城汽車の小型タイプ、さらには「代歩車」と呼ばれる運転免許・ナンバープレート不要の超小型低速タイプまで幅広い。

 テスラを所有する北京出身の友人に話を聞くと、「自宅用の充電器はメーカーが無料で設置してくれた。充電ステーションに行かなくても家にいながら充電できるので便利」と好評だ。私の「小区」の駐車場にも、様々なメーカーの自宅用の小型充電器が設置されている。

新エネ車は政府主導から市場主導へ

 2014年が中国における「新エネ車元年」であった。自動車産業を取り巻く環境が激変し、生産・販売促進を目的とした政府による支援政策が相次いだ。(※詳細は『中国でEV市場が拡大した裏に大物政治家の失脚』を参照。)

 黎明(れいめい)期に新エネ車の普及を力強く後押しした政府補助金であるが、2022年は前年比30%減、さらに、2022年12月で補助金政策を終了すると中国政府は発表している。

 つまり、中国の新エネ車は政府主導型から市場主導型へ、新たなフェーズへと突入することとなる。

 一方、国内販売だけではなく、新エネ車の外国向け輸出も好調だ。「自動車大国」と呼ばれる日本においても、大型EVバスや小型EVトラックなど、中国から商用EVを輸入する企業が増加傾向にある。例えば、佐川急便が中国製EVを7200台導入すると発表している。

 2021年の輸出台数は31万台と決して多くはない。しかし、成長スピードは前年比3倍超と驚異的だ。脱炭素を背景とした世界的なEVシフトの追い風を受け、中国メーカーによるEV輸出は今後増えていくであろう。

 そして、EVの先を見据えた新たな技術開発が着々と進められている。自動運転車だ。

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