中国建設銀行のデジタル人民元ウォレット画面
中国建設銀行のデジタル人民元ウォレット画面

デジタル人民元の使い勝手

 北京や上海などの一部の対象都市では、中国籍に限らず、外国人でも利用可能となっているため、私も試しにウォレットを開設し使ってみた。

 私が利用しているのは、中国四大銀行の一つである中国建設銀行のアプリ内にあるデジタル人民元専用ウォレットだ。最初に申請する必要があるが、すでにモバイルバンキングのための本人認証は済んでいるので、わずか数分の作業で開設できた。

 実際に正式ローンチしていないので判断を下すのは時期尚早だが、現時点では既存のデジタル決済と比較すると利便性で劣る印象があった。

 実店舗で支払いを行う限りにおいては、既存のQRコードによるスマホ決済と大差はない。しかし、アリペイやウィーチャットペイは、あらかじめウォレットに入金しておかなくても銀行口座から直接引き落とすことも可能だ。一方で、デジタル人民元の場合は、事前に必要な金額をアプリ内にチャージしておく必要がある。最初のうちは好奇心からデジタル人民元を使っていたが、このひと手間が面倒で、徐々に使わなくなってしまった。私の友人知人を見る限りでも、現時点で積極的に利用している人は皆無に等しい。

 それでは今後、デジタル人民元は中国国民に受け入れられ広がっていくのだろうか。

デジタル人民元は広がるか?

 消費者目線から見ると、利便性の面などから、デジタル決済において短期間でデジタル人民元が大きくシェアを伸ばすことは想像しがたい。

 しかし、中長期的に普及が進むポテンシャルはあると私はみている。

 その理由が「手数料」の存在だ。デジタル人民元は現金と同じ扱いであるため、中国人民銀行は指定仲介機関から両替や流通サービスにかかる費用を徴収しないし、指定仲介機関もユーザーからいかなる費用も受け取らない。一方、既存のデジタル決済では、少額ではあるが手数料がかかっている。私の友人が経営する会社は0.38%で契約しているそうだ。

 個人商店や屋台など、取引金額が小さければ大した影響はないかもしれないが、百貨店やショッピングモール、コンビニなどのチェーン店になれば一日の取引金額は大きい。店舗運営者からすると、コストはなるべく抑えたい。もし既存のデジタル決済業者が手数料を据え置くのであれば、リアルの消費現場では、デジタル人民元の利用が進むと考えられる。

 もう一つの可能性が公的機関での利用だ。最近ではほとんど見なくなったが、民間でキャッシュレス決済が幅広く普及していく過程において、遅々として導入が進まなかった場所が公立の施設だった。例えば、18年10月の四川旅行では全旅程キャッシュレスにチャレンジしたが、唯一、現金しか使えなかった場所が観光地のチケット販売所であった。北京市の公立公園でモバイル決済が使えるようになったのも最近だ。

 また、中国政府は現在、公共・行政サービスのデジタル化を積極的に進めており、ネット上で手続きから支払いまでワンストップでできるようになれば、これらのシーンでは、デジタル人民元の利用を促す方向に進むだろう。

 22年2月4日開幕の北京冬季オリンピックの関連施設でも利用され、世界的にアピールされる予定のデジタル人民元。中長期的には、徐々にその存在感を高めていくであろう。

この記事はシリーズ「西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。