(写真=Shutterstock)
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 中国の名目GDPはすでに米国の約7割にまで高まっており、国際貿易取引では米国と比肩する規模に達している。実体経済における存在感が高まる一方で、国際金融面における中国のプレゼンスは低い状況が続いてきた。

 その象徴的な事例が人民元の国際化だろう。

 人民元国際化に向けた第一歩を踏み出したのは、世界金融危機発生直後の2009年だ。米ドルへの過剰な依存からの脱却と為替リスクの回避を図るために、一部の企業による人民元建て貿易決済を解禁した。当初は、広州・長江デルタ地区(上海市、江蘇省、浙江省)と香港・マカオとの貿易を行う一部企業に対してのみの解禁であったが、国内外の地域制限や企業制限を徐々に撤廃し、範囲を広げていった。

 2016年、国際通貨基金(IMF)の「特別引出権(SDR)」の構成通貨に人民元が加えられた。SDRとは、出資比率に応じて加盟国に割り当てられ、通貨危機などの緊急時に他の外貨に引き換えることができる国際準備資産だ。これにより、人民元は米ドル・ユーロ・英ポンド・日本円と並ぶ、国際通貨の仲間入りを果たした。

 人民元国際化元年からおよそ12年。国際取引における人民元の利用現状はどうなっているのだろうか。

人民元国際化の現状

 国際取引における人民元の使用頻度と金額は足元で高まってはいるようだ。2021年9月に中国人民銀行が公表した『2021年人民元国際化報告』によると、2020年における人民元国際取引金額は28.39兆元(約482.6兆円)と前年比で44.3%伸びた。

 伸びているのが、「人民元クロスボーダー決済システム(RMB Cross-border Interbank Payment System、CIPS)」を通じた決済である。CIPSとは、2015年10月から導入されている、国際貿易や直接投資、銀行融資といった国境をまたぐ人民元決済のインフラだ。

 CIPSの運用状況を見ると、導入以降は年々増加傾向にあったが、2020年は増加スピードが一段と加速している。2020年1年間のCIPSを通じた取引回数は前年比17%増となる220.49万回、取引金額は33.4%増となる45.27兆元(約769.6兆円)に達した。1日あたりの取引回数は8855回、取引金額は1818.15億元(約3.09兆円)であった。

CIPSの運用状況(一日あたり)
CIPSの運用状況(一日あたり)
(出所)中国人民銀行

 一方、金融機関の様々な国際取引に通信サービスを提供している国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、通貨別の取引比率において人民元は2015年8月に2.79%と日本円(2.76%)を瞬間的に抜いたものの、それをピークに低下に転じた後は、およそ2%前後で推移している。2021年9月の主要通貨のシェア率は、米ドル(39.5%)、ユーロ(37.9%)、ポンド(6.1%)、日本円(2.8%)、人民元(2.2%)となっている。

 確かに国際取引における人民元利用は徐々に高まってはきている。しかし他の主要通貨と比較すると、クロスボーダー決済で積極的に使われている米ドルやユーロの数パーセント程度にすぎない。また、IMFが発表している世界の中央銀行が保有する外貨準備高の現状を見てみると、2021年第2四半期では米ドルが59.2%であったのに対し、人民元の比率は2.6%と基軸通貨の米ドルには遠く及ばない状況にある。人民元の国際化が順調に進んでいるとはいいがたい。

 このような中、人民元国際化に資する政策が矢継ぎ早に発表されている。

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