人員を総動員して実施する「流調」とは

 中国では「健康コード」が日常的に使われており、観光地や商業施設などの入場の際にスマホでのスキャンが求められる。これによって、入場時の健康チェックに加え、利用者がどの施設に立ち寄ったかをトラックできる仕組みとなっているが、これだけではコロナマップのような詳細なデータは入手できない。

 感染抑制のカギとなるのが「流行病学調査(流調)」だ。新型コロナの新規感染者が発見されると迅速に展開される調査で、感染者がどの時間帯にどこに行ったのか、誰と会ったのかといった詳しい情報が収集される。

 具体的には、氏名、住所、家族構成などの個人情報の他に、最近の旅行歴や居住歴、利用した交通機関、濃厚接触者などの詳細情報を、調査員が一軒ずつ回って聞き取り調査を行い登録する。

 調査対象者は「高リスク」地区の住人全員。冒頭で紹介した私の友人が住む「小区(団地)」だけでも3万人近い住人がいる。同じように封鎖されている隣接する「小区」でも同様の措置が取られており、かなりの人員が集中的に投入されているようだ。調査を行うのは住人ボランティアで、居民委員会が手配している。

 ※居民委員会や住民ボランティアの活動については「『3日で1000万人PCR』先端技術と人海戦術の中国コロナ対策」を参照。

 この情報を基に、「患者」や「濃厚接触者」、「準濃厚接触者(濃厚接触者の家族など)」といったグループに分けられる。患者は指定病院で治療を受け、濃厚接触者は集中隔離施設に移され14日間厳重な管理下に置かれる。準濃厚接触者は7日間の集中隔離だ。

 また、「高リスク」地区の住人は全員PCR検査が義務付けられる。友人の「小区」では、敷地内に12カ所の特設会場が設けられ、封鎖初日から5日連続で検査が実施された。その後も定期的に検査が行われる。当然同じように封鎖されているエリアでも実施されていることから、相当数の医療従事者が動員されていることがうかがえる。

 「高リスク」地区の封鎖期間は最後に新規感染者が出た日から数えて21日間。私の友人の「小区」では、隔離開始から11日目に再び新規感染者が出たため、また最初からやり直しとなってしまった。シングルファーザーとして小学生の子供の面倒を見ながら奮闘する日々は、もうしばらく続きそうだ。

 同じ北京市内でも「低リスク」地区に住む我々は、若干の行動制限は受けるものの、普段とほぼ変わらない日常生活を送っている。その裏には、私の友人のような人々の「我慢」がある。本当に申し訳なく、感謝している。同じグループチャットにいる他の友人たちからも、少しでも彼の生活を支えようと、果物など様々な「支援物資」が届けられている。

 封鎖された夜に一緒に飲むはずだった「サントリーウイスキー角瓶」は封を切らずにとってある。封鎖が解除されたら、彼が「もういい」と言うまで痛飲することにしよう。

この記事はシリーズ「西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。