(写真:Shutterstock)
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 1年延期して開催された4年に一度のスポーツの祭典が、無観客のまま静かに幕を下ろした。

 北京に住む私も、連日テレビの前にくぎ付けとなり、日の丸を背負って世界の強豪と必死に戦うアスリートの姿を見て強い勇気をもらった。海外での生活が長いと祖国を思う気持ちは強くなる。表彰式で「君が代」を聞く度に胸が熱くなった。

 たくさんの感動を与えてくれた日本代表選手、そして何より、緊急事態宣言が続く中でも無事に開催してくれた、運営スタッフ、ボランティアのみなさんに心より感謝したい。

 残念だったのは無観客となってしまったことだ。何とか中止は免れたものの、結果として最悪な状況下での開催だった。日本のコロナ対策はいったい何が問題だったのだろうか。

 まずは、最新の中国式コロナ対策を見てみよう。

「ゼロコロナ」を目指す中国式対策

 新型コロナウイルスの市中感染が数カ月間ゼロに抑えられるなど、これまで抑え込みに成功していた中国だが、インド型(デルタ型)が流入したことで、7月末以降各地で多くの新規感染者が発生した。

 7月20日、中国・江蘇省にある南京禄口国際空港のPCR検査で、空港職員の新型コロナウイルスの新規感染が確認された。南京市の発表によると、感染したのは清掃員。約10日間にわたり機内清掃などの業務をしていたが、空港における防疫措置が徹底されておらず、全国各地に拡散してしまった。

 これに対し中国政府は、徹底的な隔離と大規模な検査を組み合わせた強力な「コロナ撲滅作戦」を素早く展開した。

 私が住む北京市でも約半年ぶりに市中感染が確認された。その一つが、北京市の北東部に位置する朝陽区望京の国風上観小区(団地)。私の友人が住む場所だ。8月4日の早朝に感染が確認され、その日中に小区全体が封鎖された。同エリアの中でも屈指の敷地面積を誇る高級マンションで、大きめの部屋が多く、約2500世帯1万人が住んでいるという。感染者の住む棟の住人は部屋から一歩も外に出ることを禁じられ、その他の棟の住人は小区から出ることを禁じられた。住民全員を対象に、3週間の封鎖期間中に6度のPCR検査も実施された。

 このような厳しい措置にも文句を言う住民は全くいなかったそうだ。ゲートに山積みになった宅配物の配送など、多くの住民がボランティア活動に参加し、互いに助け合ったという。封鎖が解除された8月24日の夜にお祝いを兼ねて友人と食事を共にしたが、「逆に住民の団結力が高まった」と笑顔で語っていたのが印象深い。

 中国では、感染者が発生した場所などを中・高リスク地区に指定し重点管理を行う。北京市政府は、市民に対し不必要に北京から離れないよう呼びかけており、14日以内に中・高リスク地区が存在する都市に滞在した人を対象に、北京行きチケットの購入制限を実施した。たとえ旅先が出発前にはリスク地区でなくても、旅行中に指定される可能性も否定できない。8月初旬に旅行を計画していたが、やむを得ず中止を決断した。とても残念だったが、政府の呼びかけにより、事前に購入していたチケットが無料でキャンセルできたのは助かった。

 今回の感染拡大は感染力の強いデルタ型によるものだったが、強力な抑制策により急速に収束へと向かっている。空港で最初の感染者が見つかってから約1か月後の8月19日には、南京市の全てのエリアが低リスク地区へと引き下げられた。全国でも、ピーク時には220を超えていたリスク地区は、8月31日現在で11まで減った。最近は新規感染者数がゼロの日も少なくない。

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