2020年6月に新しくできた北京のAIIB本部ビル
2020年6月に新しくできた北京のAIIB本部ビル

 2021年5月、アジア向け国際開発金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が、大阪ガスと国際協力銀行(JBIC)の官民連合が関与するプロジェクトに融資をすることが決まった。日本企業が借入人として関与するプロジェクトへのAIIBによる融資はこれが初となる。

 関係性は複雑で、大阪ガス・JBICとAIIB両方の発表資料を読み解かないと全体像は見えてこない。

 大阪ガスとJBICは、2019年からシンガポールの老舗エンジニアリング事業会社AGPに出資を行っている。また大阪ガスは、AGPと「天然ガスバリューチェーン」に関する戦略的協業契約も締結している。

 そのAGPのインド法人が同国で計画するのが都市ガス配給事業だ。約1000万世帯に天然ガスを供給し、約1300の圧縮天然ガスステーションの設置および1.6万km超のパイプライン敷設などを通じて、インド国内の運輸・産業・商業・家庭向けにガス供給を行う。大阪ガスはこのAGPインド法人とも技術提供契約を結び、プロジェクト運営にも直接関与するとみられる。

 AIIBはこのプロジェクトに対し7500万ドル(約83億円)を融資。プロジェクト総額は5.57億ドル(約610億円)で、オーストリア開発銀行やインド国内の金融機関などとともに協調融資を実施する。

AIIBの今

 AIIBの発足は2015年12月25日。中国が主導し設立した初の国際開発金融機関に、アジアの発展途上国のみならず、欧州の英国やドイツ、フランス、イタリアといった主要7カ国(G7)を含む多くの先進国までもが加盟したことで話題となった。

 発足から5年の歳月を経てAIIBは着実に成長を遂げている。

 発足当時の創設メンバーは57カ国・地域だったが、2020年末の加盟国は計103カ国・地域にまで増加し、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の67カ国・地域を大きく上回る。なお、日本や米国は依然として参加を見合わせている。

 また、当初懸念されていた人材不足問題も解消へと向かっているようだ。2017年1月時点におけるAIIBのスタッフは90人程度にすぎなかったが、2020年末には54カ国、316人まで増えた。国籍のバランスにも配慮しており、中国人比率は「2割程度」(AIIB関係者)だという。

 スタッフの増加に伴い、業務規模も拡大してきた。2016年に承認された投融資額はわずか16.9億ドル(約1865億円)にすぎなかったが、2020年はコロナ対策支援の影響もあり99.8億ドル(約1兆1015億円)にまで急増。2021年7月末現在、AIIBが携わったプロジェクト数は134件となり、累計投融資額は264億ドル(約2兆9140億円)に達している。

 また発足当初は、世界銀行やADBなど他の国際金融機関が主導して組成した案件に後から便乗することが多かったが、最近ではAIIB主導で組成した案件が増えてきた。この5年間でプロジェクト運営に関する経験を積んできた証左と言えるだろう。

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