バランスが崩れる男女比率

「学区房」購入希望の張り紙。築20年以上の中古マンションに、市場外取引でも830万元(約1億3700万円)の値が付く。(画像の一部を修正しています)
「学区房」購入希望の張り紙。築20年以上の中古マンションに、市場外取引でも830万元(約1億3700万円)の値が付く。(画像の一部を修正しています)

 「一人っ子政策」がもたらしたもう一つの弊害が男女比率のゆがみだ。労働力になる、跡継ぎにできるといった理由から、特に農村部では伝統的に男児のほうが女児よりも重宝されてきた。産児の性別選択を防ぐ理由から、中国では出生前の性別診断も禁じられている。

 それでも男性比率が圧倒的に高い。国家統計局のデータを見ると、2008年の出生性比率は女児100に対し、男児は120.56であった。つまり、男児のほうが2割ほど多く生まれているのである。この比率が、一般的には2~7%程度、日本でも5~6%程度という事実に鑑みると、中国の男児出生率が異常に高いことがわかる。最近ではこの統計データは公表されていないが、直近の2015年でも113.51と依然として比較的高い水準にある。

 男女比率のゆがみは様々な問題を引き起こす。その最たるものが男女間のマッチング、つまり結婚だろう。2019年における中国全体の性別比率は、男性の方が4.5%ほど多かったが、これを40歳以下に絞ると10.2%にまで高まる。つまり単純計算でも10人に1人の男性が余ることとなる。グラフからも若年層における男女不均衡が確認できるだろう。

中国の人口ピラミッド(2019年)
中国の人口ピラミッド(2019年)
(出所)中国国家統計局のデータより筆者作成
(注)小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100.0とはならない。
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高まる高学歴女性の単身比率

 では普遍的に男性のほうが婚活市場で不利かと言うと、そうでもないようだ。高学歴マーケットに目を向けるとまた違った景色が見えてくる。適齢期を過ぎても結婚しない女性を指す「剩女」という言葉が生まれるほど社会問題となっているのだ。

 暨南大学の劉詩濛助理教授らの論文「為何高知女性単身比例高(高学歴女性の単身比率はなぜ高いのか)」(『財新網』)によると、大学学歴以上の結婚適齢人口に範囲を絞ると、男女比率は女性100に対し、男性は95.42、つまり男性のほうが5%ほど少なくなるという。また、中国人男性は家庭内における自分の地位を確保するために、社会的、経済的地位が自分より下もしくは同等の女性を選好する傾向にあり、高学歴女性の単身率をより一層高めていると分析している。

 実際の教育現場でも高学歴女性の多さを感じる。私が勤務する対外経済貿易大学は、財経類(金融・経済分野)では中国トップの重点大学だが、毎年の入学状況をみると約7割が女性だ。私が教える大学院でも女性が圧倒的に多く、2020年入学生は8割が女性、過去においても女性比率が9割近い年もあった。

 もともと男性比率が高いにもかかわらず、高学歴に絞れば女性の単身比率が高いということは、それ以外の層ではより多くの男性が余っている可能性を示唆している。

 婚活市場における男女のミスマッチは、将来的な単身人口の増加、ひいては出生数の更なる減少、少子高齢化の加速という悪循環を招きかねない。

 1979年から始まった「計画生育」は、当時危惧されていた人口の爆発的な増加を抑えることには成功した。しかし、長期にわたる人口抑制策が招いた人口構造のゆがみは、様々な形で中国社会に暗い影を落とし始めている。

 歴史的役割を終えた「計画生育」の完全撤廃にとどまらず、将来的には「奨励生育」への転換もあるかもしれない。

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