(写真:AFP/アフロ)
(写真:AFP/アフロ)

 アリババグループ傘下の金融テクノロジー企業「アント・グループ(螞蟻集団)」が計画していた上海と香港での新規株式公開(IPO)が延期された。

 「決済」というアリババ経済圏の中核を担うアントの上場は注目度も極めて高く、個人投資家も殺到し、調達額も史上最大になると期待されていた。上場2日前の延期発表は市場に大きな衝撃を与えた。

 突然の延期の理由は何だったのだろうか。

 上海証券取引所の発表によると、同社の幹部が関連規制当局から聴取を受け、金融テクノロジー規制環境の変化を含む重要事項が報告されており、公募・上場の条件や情報開示の要件を満たさなくなる可能性があるためだという。

 聴取を受けた幹部には、アントの議決権の5割強を握るアリババ創業者のジャック・マー(馬雲)氏も含まれており、10月下旬の講演会での彼の発言が問題視されている。

ジャック・マー氏は何を語ったのか?

 問題の講演は10月24日に上海市で開催された「第2回外灘金融サミット」の開幕式。王岐山・国家副主席がオンラインで祝辞を寄せ、周小川・中国人民銀行前行長(総裁)が基調講演を行うなど、中国の金融関係者が一堂に会する場だった。

 そのような場でジャック・マー氏が展開したのは、金融業界に対する痛烈な批判だった。

 マー氏は、「中国の金融は未熟」で「銀行は考えが古い」だから「イノベーションが必要」だと説いた。その上で、中国は「管理能力は強いが、監督能力が欠乏している」「昨日の方法では未来は管理できない」とし、古い規制で新しい取り組みを縛るとイノベーションは生まれないという考えを示した。

 私が注目したのが、「バーゼル合意は老人クラブのようなものだ」と、多くの国で導入され、中国でも採用されている銀行規制を批判した点だ。バーゼル合意は、ヨーロッパでは金融デジタル化といったイノベーションの足かせとなっており、中国には合わないとも述べている。

 中国ではフィンテック企業に対する規制強化の声が高まってきているが、上場を控えたアントに対しては規制で縛らずに自由にやらせるべきだ、と言いたかったのだろう。

 金融とテクノロジーを融合したフィンテック企業は比較的新しい概念であり、新しいサービスも次々と開発され、事業の領域が複雑で曖昧だ。「フィン(金融)」企業と見るか、「テック(技術)」企業と見るかによって当然規制の在り方が変わってくる。

続きを読む 2/2 アントはフィン企業かテック企業か?

この記事はシリーズ「西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。