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2兆元の地方支援策実施も、地方財政健全化には課題

(写真:ロイター/アフロ)

 中国で年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代)が5月22 日~28日の日程で開催された。全人代は毎年3月5日の開幕が慣例であったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、約2カ月半遅れとなる異例の開催となった。

 初日に首相が読み上げる「政府活動報告」では、実質経済成長率の目標値が毎年注目されるが、今回は1988年以降で初めて設定が見送られ、日本のメディアでも話題となった。

 目標設定を見送ったからといって、経済成長を諦めたわけではない。李克強首相は「報告」で、「雇用、国民生活の保障、脱貧困の目標達成にしろ、リスクの防止・解消にしろ、すべてにおいて経済成長の支えを必要としている」と、経済成長の必要性を強調している。

 それではどのようにして経済を成長させるのだろうか。

 経済成長の柱の一つとして「政府活動報告」で掲げられているのが「内需拡大戦略」である。新型コロナウイルスの世界的な流行で外需が急速に冷え込む中、内需を拡大させて経済成長につなげる。その主役が「地方」になりそうだ。

 財政赤字の規模を前年より1兆元(約15兆円)増やすと同時に、緊急時の特別措置として感染症対策特別国債を1兆元発行。この2兆元すべてを「地方に回す」という。

 中国は広い。日本の約25倍の国土の中には、先進諸国とほぼ変わらぬ一面と前近代的な一面が併存している。1人当たりGRP(域内総生産)をみても、最も大きい北京と最も低い甘粛省の間には約4.5倍の差がある。中国国内にはまだまだ経済発展を必要としている地方が数多く存在する。

(出所)中国統計年鑑2019

4兆元景気刺激策の教訓

 中国における危機対応の財政出動として思い出されるのが、2008年のリーマン・ショック直後に実施された4兆元に及ぶ大型景気刺激策だろう。

 この巨額の景気刺激策により、確かに中国経済はV字回復を果たし、世界経済のけん引役となった。これを機に国際経済における中国のプレゼンスが飛躍的に高まったのは間違いない。しかし、その対価として招いたインフレや過剰生産性といった副作用は、その後の中国経済に大きな禍根を残した。

 4兆元の大半はインフラ投資に使われたが、その一部は教育分野にも投じられた。余談ではあるが、当時留学生として博士課程に在籍していた私の周りで起こった環境の変化をここで紹介しておきたい。