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北京市内におけるチャイナモバイルの5Gサービスエリア。緑色のドットが利用可能エリア。20年3月現在、市街地を中心にサービスが提供されている。

 第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが、2019年11月から中国の50都市でスタートした。中国政府は当初、2020年に商用化する目標を掲げていたが、これを前倒しさせ普及の促進を加速させてのスタートだった。

 首都北京でも基地局の整備が進められており、5Gサービスエリアは徐々に広がっている。とはいえ、私も利用している中国通信キャリア最大手の中国移動通信(チャイナモバイル)の現在の状況を見てみると、北京の中心部では利用可能エリアは広がっているが、依然としてまだら模様だ。郊外はほとんど使えない。

 サービス開始から数カ月しか経過しておらず、ユーザーは依然として様子見ムードのようだ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、スマートフォンの販売が落ち込んでいることも影響しているのだろう。実際に、私の周りで5Gサービスを利用している中国人はほとんど存在しない。私が勤務する対外経済貿易大学の在校生・卒業生にも利用状況を聞いてみたが、5G利用者は一人もいなかった。

 その理由として最も多く聞かれた声が、「スマホの価格が高すぎる」であった。

 現時点で販売されている5G対応スマホは、華為技術(ファーウェイ)やサムスンなど大手メーカーの上位機種が主流となっている。チャイナモバイルのネット販売では様々なメーカーの5G対応機種を取り扱っているが、メインとなる価格帯は3000~4000元(約45000~60000円)と、現行の4Gモデルの1000~2000元(約15000~30000円)よりかなり高めだ。

新型コロナによる景気下振れに5G投資で対応

 しかし、5Gの普及期が今年訪れようとしている。

 各スマホメーカーも低価格機種の販売開始を予定しており、5G対応スマホへの機種変更ブームが起こりそうだ。例えば、小米(シャオミ)創業者の雷軍董事長は、20年中に10機種を発売し様々な価格帯をカバーすることを明らかにした。実際に、同社が発売している5G対応スマホの最安機種は2000元を切り、4Gのボリュームゾーンに近づいてきている。

 また、もう1つ懸念される5Gサービスエリア問題も、新型コロナウイルスの感染への対応が契機となり、今年急速に広がる可能性がでてきた。

 20年は中国にとって「所得倍増計画」の達成がかかった重要な年である。だが、新型コロナの影響で経済成長に急激な下方圧力がかかっている。国家統計局が公表した20年1~2月の主な経済統計を見ると、固定資産投資が24.5%減、社会消費品小売総額が20.5%減、工業生産が13.5%減と軒並みマイナス成長となった。

 落ち込んだ経済を立て直すため、年後半にかけて大規模な経済対策が打ち出されると予想される。蒸発したサービス消費分を補うためにも、巨額のインフラ投資が実施されるだろう。

 新型コロナの中国マクロ経済に与える影響や「所得倍増計画」に関しては、『共産党結党100周年を前に、新型肺炎で試される中国経済』を参照。

 その投資先の1つが、危機対処の一助となったインターネット分野である。中国メディアによると、中国共産党は3月4日に開催した政治局常務委員会において、5Gネットワークを含む7分野の「新型インフラ」の整備加速が示された。

 それに呼応する形で、チャイナモバイル、中国聯合網絡通信(チャイナユニコム)、中国電信(チャイナテレコム)の通信大手3社は、5G関連投資の加速を表明した。各社が公表した報告書によると、20年における3社合計の5G関連投資計画額は、19年比で約4.4倍となる1803億元(約2.7兆円)に達する見通しだ。

 19年12月に開催された全国工業情報化工作会議では、20年末までに全国の「地級市(総数293市)」で5G基地局の整備を目指しているとしていたが、これよりも速いスピードで進むと予想される。