インターネットを積極的に利用する教育現場

 中国の『史記』にも「禍福は糾(あざな)える縄の如(ごと)し」とあるが、幸福と不幸は表裏一体の関係にある。

 実際に、「禍(わざわい)」が降りかかるサービス産業の中にも、「福」が訪れようとしている分野もある。人と人の接触が不要なインターネットサービスだ。ここでは、私が勤める対外経済貿易大学を例に、インターネットを利用した新しい取り組みの一部を紹介しよう。

 中国では危機への対応速度が本当に速い。新学期開始の延期や帰省している学生の登校禁止などの通知を受け取ったのが1月26日。1週間後の2月2日には、新学期に情報通信技術(ICT)を活用した遠隔教育を本格導入することが決まった。その後、急ピッチで準備が進められ、当初の予定通り2月24日に新学期がスタートした。

 修士・博士課程の指導教官には、テンセントのチャットアプリ「微信ウィーチャット」を使った学生管理が要請された。私が指導する学生たちも修士論文の初稿提出期限が迫ってきており、メールやテキストメッセージだけでなく、ビデオチャット(テレビ電話)などを利用した指導を行っている。

 実は、授業や学生指導以外の業務に関しては、大学内のデジタル化、インターネット化はかなり進んでいた。私は2002年から北京の大学に身を置いているが、特にここ数年の変化は目覚ましい。

 例えば、学期末に提出するタームペーパー(小論文)。学生がパソコンで作成した論文をシステム上にアップロードして提出すると、中国国内で発表された過去の論文を参照し、自動的に複写率(他の論文などからの無断引用の割合)が算出される。40%を超えると落第、学位論文だとこの比率はさらに厳しくなる。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、教育現場のインターネット化はさらに進みそうだ。サバティカル(研究休暇)で他国に行っている教員の授業は休講になっていたが、これからはオンラインで行われる時代になるかもしれない。学位論文の口頭試問も、オンラインで実施すれば、他地域の専門家に参加してもらうことも可能となるだろう。

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